アメリカ大統領選は、民主党のハリス副大統領(60)と共和党のトランプ前大統領(78)が大接戦を続け、5日の投開票日が間近に迫ったものの勝敗は見通せない。9月下旬に大型ハリケーン「ヘリーン」が襲い、甚大な被害を受けた南部ノースカロライナ州を歩くと、災害復興を巡って激しい選挙戦が繰り広げられていた。(ヘンダーソンビルで、鈴木龍司、写真も)

◆トランプ氏「災害資金を不法移民に流用」と攻撃、同調する人も

 「民主党政権に不満を持つ人々が、泥の中を歩いてでもここへ向かっている」  多くの家屋が倒壊し、道路の復旧が遅れる西部ヘンダーソン郡の共和党支部議長、ブレット・キャロウェイさん(64)が、ヘンダーソンビルの期日前投票所で「記録的な投票率になるだろう」と得意げに語った。

有権者にトランプ氏への支持を呼びかける共和党支部議長のキャロウェイさん(右から2人目)=24日、米ヘンダーソンビルの期日前投票所で

 ノースカロライナ州は大統領選の勝敗を分ける激戦州の一つ。同州で3連勝を目指すトランプ氏は2020年選挙でバイデン大統領(81)に1.3ポイント、約7万5000票差まで迫られたが、同郡では1万3000票近くリードした。キャロウェイさんは投票率の落ち込みを懸念したが、先月17日に始まった期日前投票の出足は順調で「トランプ氏をリーダーとして求めている証拠だ」と胸を張った。  「ヘリーン」の犠牲者は240人を超え、このうち州内が半数以上を占めた。今も約90人が行方不明で、2005年の「カトリーナ」に次ぐ被害規模となった。  被災地にいち早く入り、食料や物資を届けたトランプ氏は「民主党政権は災害対応の資金を不法移民の支援に使った」と根拠のない主張でハリス氏を攻撃。「共和党が強い地域を助けようとしない」と、有権者の怒りをあおり、実際「ハリス氏には失望した」(60代女性)と同調する声も聞かれた。

◆州外に避難している人も…投票所に足を運べるか

 一方で冷静な意見も。土石流の被害が激しく一時的に孤立したバットケイブの消防署幹部ロナルド・ソビンさんは「連絡に時間を要することはあったが、政府はできる限りの対応をしてくれている」と評価した。

ハリケーンの土石流による被害が残る米バットケイブの川沿いの住宅街=25日

 ハリス氏は同州のボランティアを激励し、救援物資の箱詰めを手伝うなど、被災地に寄り添う姿勢をアピール。演説で「ハリケーンの政治利用は道徳に反する」と反撃に出ている。  西部で数少ない民主優勢のバンコム郡で民主党支部議長を務めるキャシー・クラインさん(72)は「トランプ氏の虚偽の主張は有権者への裏切り」と強調する。「誰もが投票できるべきだが、共和党支持者が多い郡で行く人が少なければ有利になる」と、強い怒りから本音も漏らした。

トランプ氏の言動を批判する民主党支部議長のクラインさん=24日、米アシュビルで

 選挙管理委員会などによると、西部の4カ所で期日前の初日に投票所の開設が間に合わなかったが、州全体の投票者数はすでに過去最高を更新した。ただ、5日の投票日の準備が不安視される被災地もある。州内外の親戚などを頼って避難生活を続ける住民は多く、民主党支持の80代女性は「日常生活がままならない状態で、投票所まで行く心の整理がつかない人もいる」と明かした。

有権者にハリス氏への支持を求める民主党のボランティア=24日、米ヘンダーソンビルの期日前投票所で

 同州のカトーバ大のマイケル・ビッツァー教授は「2020年の大統領選はハリケーンの被害が大きかった西部の25郡の投票数が全体の17%を占めた」と指摘。「今回は(予測不能の)コイントスの状況。共和党の支持者がどれだけ投票に足を運ぶかが、結果を左右する可能性がある」と語った。 

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