ミャンマーと国境を接するタイ北西部メソトには、2021年の軍事クーデター後に母国を逃れた多くのミャンマー人たちが暮らす。正規の仕事に就けず、厳しい生活を送る人は少なくない。4月中旬の取材で訪ねた元地方議員の男性(48)も、その一人だ。

4月15日、タイ・メソトで、接着剤を使って小さなプラスチック製の部品を組み立てる男性の妻=藤川大樹撮影

 ミャンマー各地を転々とした後、昨年10月にメソトへたどり着き、今は家族5人で息をひそめて暮らす。9~18歳の子ども3人は学校に通っていない。英語が堪能な13歳の少年に「勉強はどうしているの」と尋ねると「オンライン」と答えた。密入国のため、ブローカーを通じて地元警察に毎月賄賂を支払って摘発を逃れている。  一家は内職で小さなプラスチック製の部品を組み立てている。おもちゃに搭載するモーターの部品だという。報酬は1000個で50バーツ(約200円)。家族全員で数時間かけてこしらえても、1回の食事分にもならない。  「生きていくためには、仕事を探さないといけない。確かに給料は安いが、もらえるだけありがたい」と彼は口にした。脆弱(ぜいじゃく)な立場に置かれた人々が搾取される理不尽な現実に、言葉を失った。(藤川大樹) 

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