民生品の輸出が減少し、マスクや防護服の着用が徹底される一方、ロシアからの燃料輸入は継続…  新型コロナウイルス禍で北朝鮮が国境封鎖していた2023年春、中朝国境地帯を訪れた愛知大3年の熊本敦幸さん(22)が、現地を写真撮影した。さまざまな証言と写真から、今につながる国境の様子が浮かんだ。(ソウル・上野実輝彦)

延吉で市場に掲げられた看板

◆「北朝鮮関係の商店、見なくなった」

 熊本さんは2020年4月から今年1月まで、北京外国語大生として中国に滞在。2023年2月と4月に、複数の中朝国境都市を訪れた。  「コロナ以降、ここでは北朝鮮のたばこやバッジ、北朝鮮関係の商店を見なくなった」。延辺朝鮮族自治州の州政府所在地である延吉(えんきつ)で4月、熊本さんを案内した現地のタクシー運転手はそう語ったという。

丹東の屋台では、さまざまな種類のたばこが売られていた

 延吉最大の市場でも、売られていた北朝鮮の品は海産物や漢方薬の材料程度。かつての土産物屋はほとんど閉店し、いわゆる「北朝鮮レストラン」も営業をやめていた。コロナ禍で北朝鮮からの物資搬出が滞ったことに加え、熊本さんは「労働者の派遣先を、より外貨の獲得しやすい中国企業に切り替えたのでは」と予想する。  一方で2月の遼寧(りょうねい)省南部の丹東(たんとう)では、たばこなどの嗜好(しこう)品は比較的充実していた。国境の中朝友誼(ゆうぎ)橋では、中国の出入国管理当局者とみられる人々の往来する姿もあり、熊本さんは「丹東に絞って国境を再び開こうとしている」と感じた。実際、丹東はその夏、国境を開いた。

◆北朝鮮とロシア、軍事協力への道?

偶然出くわした、中朝国境沿いを走る北朝鮮の旅客鉄道

 現地案内人が「1年でもほとんど見られないくらい珍しい」という写真が撮れたのは、4月に訪問した北東部の国境都市・図們(ともん)の近郊だ。タクシーでの移動中、国境沿いを走る北朝鮮咸鏡北道(ハムギョンプクト)の咸北線の旅客鉄道に偶然出くわした。  客車や貨物車が連結された列車の写真は、その場に居合わせた現地住民も撮影していた。拡大したところ、乗客はほぼ全員がマスクを着用しており、コロナ対策の厳しさがうかがえた。

琿春では、ロシアからの石油を厳重に検査する防護服の人々が見られた

 北朝鮮、ロシアと接する琿春(こんしゅん)では、ロシアから北朝鮮に到着した貨物列車が見られた。車体には英語で「ウラル・ロジスティクス」と書かれ、中身は石油の可能性があるという。  検査する複数の人々は白い防護服に身を包み、防疫を徹底。熊本さんは「コロナ禍でもロ朝協力は続いていると実感した」と話した。北朝鮮によるロシアへの武器供与など両国間では今、軍事協力が進んでいる。 

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