<連載 ミャンマーの声>  タイで35年にわたり、ミャンマーからの難民や移民らに無償で医療を提供する医師シンシア・マウンさん(64)が来日し、東京新聞「こちら特報部」の取材に応じた。2021年2月のミャンマー国軍のクーデター後、タイへの難民が急増している。深刻化する状況を語った。(北川成史)

マグサイサイ賞受賞者でミャンマー難民の治療に取り組むシンシア・マウンさん=東京都豊島区で(五十嵐文人撮影)

◆国軍の弾圧から逃れ、隣国タイでクリニックを開設

 「クーデター後、患者は1日当たり400~500人。ほぼ倍増した」。タイ北西部メソトの「メータオ・クリニック」で院長を務めるシンシアさんは話す。  シンシアさんはミャンマーの少数民族カレン人で自身も難民だ。1988年、同国で広がった民主化運動を国軍が弾圧。大勢の人がメソトに逃れた。医師になっていたシンシアさんもその一人で、1989年、仲間とともにクリニックを開いた。  現在、内科、外科、産婦人科など約130床。運営する移民学校を含めスタッフは約460人に上る。正規の在留資格がなく、社会保険の枠外にいる難民らを守る活動は国際的に高く評価され、シンシアさんは2002年、アジアのノーベル賞と呼ばれる「マグサイサイ賞」を受賞している。

◆クーデター後「症例が複雑に」、戦闘で心身ともに傷つき

 「患者の数が増加しただけでなく、症例が複雑化している」。シンシアさんは現状を危ぶむ。  2021年のクーデター後、国軍は抗議活動に参加した医療従事者らを拘束するなど弾圧した。国軍と民主派や少数民族との内戦が広がり、国連推計で300万人超の国内避難民が発生した。

メータオ・クリニックの入口近くに立つシンシア・マウンさん=2023年1月(北川成史撮影)

 ジャングルの避難民キャンプなど、劣悪な環境で暮らす人が増えた。一方、医療体制は崩壊し、ワクチンや治療薬は行き渡らない。  そうした人々がタ...

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