民主党大会で大統領候補の指名を受諾し、演説するカマラ・ハリス氏＝2024年8月22日、米シカゴで（鈴木龍司撮影）
確かに初のアジア系女性大統領候補としての闘いには、一般的に「アジア系」と「女性」という二重の「天井」が存在していたと思いますが、それがハリス氏の主たる敗因ではないと私は思っています。むしろ、過去にはカリフォルニア州の司法長官を務め副大統領まで上り詰めてきた彼女のキャリアの圧倒的なエリート性、完璧で隙のない高級ブランドファッションに象徴されるハイクラス感、そして高まいな理想論に聞こえる発言の数々が決定づけた「金持ちエリートたちの民主党」というイメージこそが大敗の原因だと考えます。◆かつては「金持ちの政党＝共和党」、支持者の家は一目で分かった
かつて「金持ちの政党」は共和党でした。アメリカンドリームを体現して巨万の富を得た者、天然資源を掘り当てて財を築いた一族、そしてそれほどまでには富裕ではないが、米国の基幹産業の製造業に従事して高い賃金を得て、典型的な中流家庭の暮らしを手に入れた者たち。要するに成功したオトコたち（マッチョ度の高い）の集まりが共和党でした。 これまで何度も大統領選挙を取材してきましたが、ボランティアたちの党員確保の戸別訪問にくっついて行くと、一目でその家が共和党支持と分かったものです。なぜなら共和党支持者の家には、よく手入れされたみどりの芝生の庭があり、白い木製の柵がしつらえてあって、そのたたずまいから「しあわせな暮らし」「満たされた家庭」のにおいが漂ってくるからでした。◆1970年代、留学先のミシガンに流れていた「しあわせな」空気
1970年代、米国留学していた頃の安藤優子さん。自動車産業が盛んな町でのホームステイを通し、中流家庭の雰囲気を経験した（安藤さん提供）
私が1970年代に留学しホームステイした家もそうした「におい」に満ちていました。場所はミシガン州デトロイト郊外。お父さんは地元では有名な建設会社を経営する2代目で、大きな湖に面した広大な家の半地下には20メートルプールがあり、飛び込み台まで備えてある豪華さでした。 当時のデトロイトは自動車産業の中心地としてまだその勢いを残していて、私のホームステイ先のミルフォードという小さな町も自動車産業の関連事業に関わっている比較的豊かな人たちのベッドタウンのようになっていました...残り 957/1914 文字
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