ブラックロックはオルタナ投資を次なる成長分野に定める=ロイター

【ニューヨーク=竹内弘文】サウジアラビアの政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)は30日、世界最大の運用会社、米ブラックロックと提携すると発表した。投資会社を共同設立し、PIFは最大50億ドル(約7900億円)を拠出する。サウジ側は自国の産業育成、ブラックロック側はインフラなど投資機会の開拓を狙う。

新会社はブラックロック・リヤド・インベストメント・マネジメント(BRIM)で、サウジ首都リヤドを拠点とする。PIFの資金のほか、国内外の投資家から資金を募る。上場株式や債券といった伝統的な金融資産だけでなく、インフラ投資、未公開株や不動産などオルタナティブ(代替)資産も含めた幅広い資産を投資対象とする。

提携を巡り、PIFとブラックロックの利害は一致している。インデックス(指数連動)運用や上場投資信託(ETF)などを軸に成長してきたブラックロックは運用資産の大半を伝統的資産が占め、3月末時点の運用資産総額に占めるオルタナ資産の比率は3%にとどまる。同社はオルタナ資産を次なる成長分野として定める。

1月にはインフラ投資ファンド大手である米グローバル・インフラストラクチャー・パートナーズ(GIP)の買収を発表した。ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は3月に公表した投資家宛ての手紙で、エネルギー関連インフラは脱炭素経済への移行やエネルギー安全保障の観点から「間違いなく新規投資の需要が大きい」との見方を示した。

世界有数の産油国であるサウジの政府系ファンドとの提携は、資金の出し手という面でも、エネルギー関連のインフラ投資案件の発掘という面でもブラックロックにとって魅力的だ。

PIFは、石油・天然ガスが中心のサウジ経済を変革する構造改革プラン「ビジョン2030」の実現を側面支援する役割を担う。国内プロジェクトへの成長資金を融通し、付加価値も高い資産運用業界の育成は中長期の課題の1つだ。

PIFのヤジード・A・アル・フミード副総裁は、提携が「サウジの資産運用業界を国際的に多様化させ、ダイナミックなものにするという取り組みを前進させる」と声明で述べた。フィンク氏も「サウジはビジョン2030で投資先としての魅力を高めている。長期な投資機会を世界の投資家に提供できるのをうれしく思う」との声明を出した。

ブラックロックは他の政府系ファンドとの連携も進めている。シンガポールのテマセク・ホールディングスと設立した資産運用会社、デカーボニゼーション(脱炭素化)パートナーズは4月、1号ファンドで14億ドルの調達を完了した。

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