◆大学で脱北者と知り合ったのをきっかけに
朝鮮半島の伝統の韓服(ハンボク)をアレンジした衣装を着た男女が、南北の葛藤と和解を表現した音楽に合わせてK-POP風のダンスを踊る。ソウルで不定期に開く公演に向けた練習風景だ。伝統の韓服をアレンジした衣装を使った舞台を企画する李佳映代表(右)ら「HHark」のメンバー=3月、ソウルで
HHarkは「ヒップな韓(ハン)半島(朝鮮半島)」の頭文字と「箱舟(ark)」の掛け合わせ。ヒップは英語で「新しく個性が強い」といった意味。統一という軽くないテーマに関心を持ってもらおうと、若者向けの要素を採り入れている。 代表の李佳映(イガヨン)さん(38)は、祖母が朝鮮戦争の際に北朝鮮地域から避難した「失郷民」で、南北分断の悲哀を身近に感じながら育った。大学時代の2008年、脱北者と知り合ったのをきっかけにサークル活動として始め、現在は4人の脱北者を含む20~40代の12人が所属している。 ファッション担当の河信雅(ハシンア)さん(24)は北朝鮮の平安南道(ピョンアンナムド)出身。16年に脱北し、現在はソウルの大学に通う。北朝鮮の人は日常的に韓服を着るといい、「韓国でも普段着られる韓服を作りたい。南北の共通点をつなげることが、統一の準備になる」と語る。李さんは「脱北者も私たちと同じ能力や才能を持っている。彼らの夢を育てられる場をつくりたい」という。◆文化の力で北に「平和や愛のメッセージ」伝われば
河さんを含め、韓国で暮らす約3万4000人の脱北者は、故郷に家族を残していることなどから統一実現を望む傾向が強い。一方、南北の分断が固定化して70年以上がたち、北朝鮮や脱北者の存在に関心を向ける若者は多くない。「自分たちも物価高などで大変なのに、北と統一すれば混乱をもたらすという現実的な反応が多い」と李さん。南北の和解をテーマにした舞台の練習に臨むメンバー
メンバーたちも最初はそうだった。音楽担当の鄭炯宰(チョンヒョンジェ)さん(39)は「脱北者と時にぶつかりながら、彼らの考え方を理解できるようになった。無関心だった若者が統一を考えてみるようになっただけで、意味がある」と話す。 金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記は昨年末の党会議で「南北は敵対的な二つの国家」だと述べ、同じ民族であることも否定し始めた。北朝鮮内に韓国の情報が流入し、住民の韓国に対する憧れが広がるのを警戒しているといった見方がある。 「民族は正恩氏の言葉で変えられる概念じゃない」と憤る李さんらは、文化の持つ力は大きいと信じる。「私たちの作るコンテンツがいつか北朝鮮に流入し、平和や愛のメッセージが伝われば」と思い描く。◆「戦争で早期決着」北朝鮮では一般的
北朝鮮の人々は統一をどう考えているのか。脱北者の河信雅さんに聞いた。脱北し、今はソウル大に通うファッション担当の河信雅さん
私は北朝鮮の田舎で育ち、韓国ドラマも見たことがなかった。こんなに韓国との格差があるとは知らず、「われわれが主導して統一し、韓国大統領の悪政に苦しむ国民を助けなければいけない」と思っていた。 一方で、生活が苦しいので早く南と統一してほしいという人もいる。失うものがないから「早く戦争で決着をつけるべきだ」という考え方は、北朝鮮では一般的だ。 脱北して韓国へ来た後、文在寅(ムンジェイン)前政権で南北関係が一時的に良かった時期には「北へ旅行に行けるようになるかも」と期待があった。関係が悪化した今は「戦争してでも統一して、北朝鮮住民を救ってほしい」と考える脱北者もいる。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。