NATOの外相会合は3日から2日間、ベルギーの首都ブリュッセルの本部で開かれます。

会合に先立ち、ルッテ事務総長が記者会見し「われわれには協議しなければならない緊急の事案がたくさんある。NATOはともに脅威に立ち向かう」と述べました。

会合ではアメリカのトランプ次期大統領が集団防衛に対するヨーロッパ側の負担が少ないなどと批判し、NATOのあり方を見直すと訴えてきたことを踏まえ、防衛費の増額について意見が交わされる見通しです。

会合にはロシアの侵攻が続くウクライナのシビハ外相も参加する予定で、トランプ氏がウクライナ支援に消極的な姿勢も示す中、NATOとして支援の継続を確認する方針です。

さらに、ヨーロッパの各国はロシアが北朝鮮やイラン、中国と軍事的な連携を深めているとして懸念を示しており、4か国への対応をめぐっても議論する見通しです。

トランプ氏 “アメリカに防衛を依存” NATOをたびたび批判

アメリカのトランプ次期大統領は、NATOについて、加盟するヨーロッパの多くの国がアメリカに防衛を依存しているとして、たびたび批判してきました。

そのひとつの目安とされているのが加盟国の防衛費の対GDP比です。

NATOは2014年、ロシアが力を背景にウクライナ南部のクリミアを一方的に併合したことを受けて、加盟国が2024年までに防衛費をGDPの2%以上に引き上げるとする目標で合意しました。

しかし目標を達成しているのは加盟国の32か国中、23か国にとどまっています。

トランプ氏は今回の大統領選挙の事実上の公約「アジェンダ47」の中で、NATOについて「みずからの政権下でNATOの目的と任務の根本的な見直しを始めたが、そのプロセスを完了させなければならない。西洋文明にとって最大の脅威はロシアではない」と述べ、NATOのあり方を見直すと強調しています。

さらにことし2月には南部サウスカロライナ州で開かれた選挙集会で「NATO各国は軍事費を十分に負担していない。彼らが払わないのであればわれわれは防衛しない」と述べるなど、相応の費用負担がなければ加盟国が攻撃を受けても防衛しない構えを繰り返し示しています。

こうした発言を受けて、ヨーロッパの加盟国の間では、トランプ氏は大統領就任後、NATOへの関与を弱めるのではないかとの懸念が広がっています。

トランプ氏の出方に懸念強めるラトビア

トランプ氏の出方に懸念を強めている国の1つがアメリカをはじめとするNATOからの支援を頼りにしているバルト三国のラトビアです。

ロシアと国境を接し、人口はおよそ190万。

陸海空軍の兵力はあわせておよそ8000人で、アメリカが500人規模の部隊をローテーションで派遣しているほか、ことし7月にはカナダやスペインなどアメリカ以外の12の加盟国がラトビアとともに3000人規模の多国籍旅団を発足させています。

多国籍旅団は11月、ラトビアの領土の一部が奪われ、それを奪還するという想定で軍事演習を行い、各国の部隊が連携を確認していました。

軍事演習後の記者会見でNATOのルッテ事務総長は「訓練はNATOがあらゆる事態に備え続けていることを示すものだ。ラトビアはNATOを、NATOはラトビアを頼りにできる」と述べ、NATOの結束は揺るぎないと強調しました。

隣国ロシアのウクライナ侵攻 ラトビアで広がる危機感

隣国のロシアがウクライナ侵攻を続ける中、ラトビアでは、国の安全を守るにはアメリカをはじめとするNATOからの支援が欠かせないと危機感が広がる事案も起きています。

ことし9月、ロシアとの国境から40キロほど離れた集落にロシアのドローンが落下しました。

落下したのは民家のない茂みでしたが、現場には直径1.5メートル近くの大きな穴があいていました。

ラトビア軍によりますと、落下したのはイラン製の自爆型ドローン「シャヘド」で、爆発物を搭載していたということで、ウクライナを狙ったものとみられています。

現場から2キロ離れた住宅に設置された防犯カメラの映像では、飛行するドローンが発したとみられる大きな音が収録されていました。

この家に住む男性は「何もないところに落ちた。市街地や人が住んでいる場所ではなくてよかった」と話していました。

その後、軍が爆発物を無力化し、けが人はいませんでしたが、住民の間では不安が広がっています。

この集落に住む50代の女性は「戦争はすぐ近くで起きていて、ロシアが侵攻してくる可能性もある」と話していました。

また別の50代の女性は「私たちはロシアとの国境の近くに住んでいる。このようなことがいつ起きてもおかしくない」と話していました。

今回の事案について、ラトビア政府はロシア側に対し抗議したものの、これまでのところ回答はないとしています。

防空態勢の多く NATOの支援に頼らざるを得ず

今回のドローン侵入の事案を受け、ラトビア軍は国境沿いにレーダーや低い高度を飛行する航空機などから防衛するシステムを備えた部隊を新たに配置しました。

しかし戦闘機や中距離以上の地対空ミサイルを保有していないため、防空態勢の多くをNATOの支援に頼らざるを得ないのが実情です。

ラトビアはNATOに対し防空態勢の強化を要請していて、アメリカのNATOへの関与が弱まれば支援が滞るのではないかと不安も広がっています。

ラトビアのスプルーズ国防相は「アメリカからの引き続きの支援を期待する。アメリカを含むすべてのNATO加盟国の利益になる。強力なNATOにとって、アメリカは欠かすことができない」と話しています。

ウクライナ “NATO加盟以外 いかなる代替案も受け入れず”

ウクライナ外務省は3日、NATOの外相会合を前に、ウクライナの安全を確保する手段としてNATO加盟以外のいかなる代替案も受け入れないとする声明を発表しました。

この中で、ウクライナがソビエト時代に配備されていた核兵器を放棄する見返りとしてアメリカ、ロシア、イギリスの3か国が、ウクライナの主権や独立を尊重し、安全を約束した1994年の「ブダペスト覚書」に触れ、ロシアの侵攻を防ぐことはできなかったと指摘しました。

そして「ブダペスト覚書の苦い経験からウクライナは、NATOへの完全な加盟に代わるいかなる代替案も受け入れない」としています。

その上で「いま、ウクライナをNATOに招待することは、ロシアの脅しに対する効果的な対抗策となる」と強調し、ウクライナの加盟に向け、正式な手続きの開始に踏み切るよう呼びかけました。

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