日ロ友好のシンボルだったシベリア猫が死んだ。ロシアのプーチン大統領から秋田県の佐竹敬久知事に贈られたオス猫「ミール」。平和の使者は、ウクライナ侵攻の終結を見ることなく、天国へと旅立った。

 ふさふさしたグレーの毛をまとったミールが秋田にやってきたのは2013年。東日本大震災の被災地を支援したロシアに感謝の気持ちなどを伝えようと、県が震災翌年の12年、犬好きで知られるプーチン氏にメスの秋田犬「ゆめ」をプレゼントした。ミールはその返礼として贈られた。

 北方領土問題や漁業問題などを巡り、とかくぎくしゃくしがちな日本とロシア。知事は両国融和の願いを込めて、ロシア語で「平和」を意味する「ミール」と名づけた。

 知事がロシア駐日大使と会談した際には、「ゆめ」にひっかけて「夢が成就するには平和でないとならない」と話し、互いの絆を喜んだ。

 ところが22年2月、ミールにとっても悲しい出来事が起こる。ロシアが隣国ウクライナに武力で攻め込んだのだ。

 「平和」の名づけ親である知事は「猫に罪はない」「うちのミールはプーチン大統領と違って非常に優しい」と愛猫をかばいつつ、「人道上の問題からもきわめて悪質で怒りを覚える。国際世論が団結して、なんとか侵略を止めることが必要だ」とロシアの軍事侵攻を強く非難した。

 1歳になるころ秋田にきたミールは、愛猫家の知事の自宅で他の猫と一緒に育てられた。仲間の猫とのんびり過ごす様子を知事自身が撮影し、たびたび動画配信してきた。

 6月ごろから体調を崩して食欲が衰え、今月3日未明、12歳で病死した。最期をみとった佐竹知事は「先に天国に行っている(佐竹家の)猫たちと仲良く遊べと声をかけた」と寂しげに話した。全国から悼む声や花が届いているという。

 ところで、「ゆめ」は元気なのか。知事が最後に見たのは、雪の中でプーチン氏と戯れる姿。かなり以前に撮った映像で、その後は情報が一切ないという。「ゆめがどうなっているのか一番気がかり」と知事も安否を心配している。

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