オランダから秋田県にかほ市に移住し、ヨーロッパの家庭料理が楽しめる店を営んでいる夫婦がいます。秋田にいながら海外の気分が味わえる店と、自然豊かな町での暮らしを満喫している夫婦の思いを紹介します。
海が近いにかほ市金浦に、ヨーロッパのパンや家庭料理を味わえる店があります。その名も「BAKERY&BISTRO CRUST(クラスト)」。オランダ出身のペーターさん(43)と由利本荘市出身の亀崎真望さん(38)が夫婦で営んでいます。
真望さんは17年前、音楽の勉強をするために由利本荘市を離れ、オランダの大学に留学しました。オランダの生活にも慣れてきたころ、食品関係の仕事をしていたペーターさんと出会い、二人は結婚し子どもを授かります。
二人で話し合った結果、「日本の自然豊かな環境で子育てをしたい」そして、ペーターさんの「いつか自分の店を開きたい」という思いをかなえようと、秋田への移住を決意しました。
真望さんとペーターさんは、移住した理由について「自然が多いことがまず一つの理由。山と海が近い。ちょうど子どもが生まれるタイミングだったので、子どもたちは自然が多いところで育てたくて秋田にした」と話します。
初めに二人は、オランダでなじみ深い気軽に楽しめる飲食店“ビストロ”を開こうとしました。しかし、料理に合う理想のパンが見つかりません。
そこでペーターさんは、自分でパンを作ろうと本を読んだり、由利本荘市のカフェで半年間修業したりして、独学でパン作りを学びました。
使用する小麦粉は多い時で15種類にもなり、店内にはペーターさんこだわりのパンがずらりと並んでいます。
「フラーイ」は、ペーターさんが生まれ育ったオランダ南部で愛される伝統的な焼き菓子です。中にはやわらかく煮たカシスが入っていて、パイのような見た目ですが、パイ生地ではなくパン生地で作られています。
ビストロでスライスしたパンと一緒に楽しめるスープは、オランダ流の大きなボウルで提供されています。優しい味で、何度でも口に運びたくなるおいしさ。ヤギチーズのコクとうまみがスープに溶け出していて、まろやかです。
店を開いてから3年。珍しいパンを求めて、たくさんのお客さんが訪れるようになりました。ペーターさんは、日本語を真望さんに教わりながら、お客さんとも積極的に会話を楽しんでいます。
ペーターさんにお客さんと何を話しているのか聞いてみると「パン、子どもたち、子どもたち、パン」と答え、真望さんいわく「子どもたちの話が多いかな」ということです。
他にもペーターさんは「ちょっと天気についても話す。秋田弁は難しい。おばあちゃんたちの秋田弁が特に難しい」と話していました。
店の近くに住む常連客は「店の雰囲気も良くて、ペーターも真望さんも優しくて、話が止まらない時もありますけど、とても楽しいところ」と話します。
ペーターさんは、オランダから遠く離れた秋田での暮らしをとても気に入っているそうです。
「自然が良い。自然とコミュニティがある。小さい町だがスーパーもあり、バランスが取れている。僕たちの子どもは2歳と4歳だが、にかほ市は子育てしやすい」と話すペーターさん。
真望さんは「日本に来たらペーターが店を開きたいという話をしていたのが現実になって、いろんな人が喜んでくれて、たくさんの人が来てくれるというのが…すごく現実味がない。本当にかなったことが不思議な感じがする」と笑顔を見せます。
にかほ市の自然に囲まれ、夢をかなえた二人。
今後については「過疎化が進んでいるので、人口減少で小さい町がなくなってきているが、都会ではなくこういう規模の町に住みたいという人は多いと思う。そういう人たちに町を残していきたい。私たちがここでやっていることが町の活性化につながっていけばいいと思う」と話します。
移住して新たにヨーロッパの食文化を広めているペーターさんと真望さんは、これからもにかほ市に新しい風を吹かせます。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。