アルゼンチンのミレイ大統領は財政支出に大なたを振るう(9月、ニューヨーク)=AP

アルゼンチンで発足から1年になったミレイ政権の経済改革が一定の成果を上げている。国民生活を圧迫する副作用もあるが、支持は底堅い。改革の果実を広く国民が実感できるようにしてほしい。

ミレイ大統領は自由至上主義者(リバタリアン)の経済学者だ。異例の財政緊縮策を実行に移した。公共事業を停止し省庁数を減らした。規制緩和も進めている。

この結果、インフレ率は前年同月比でなお160%を超すものの前月比では2%台に落ち着いた。同25%だったピークと比べ改善は鮮明だ。財政収支は16年ぶりに黒字になりそうだ。国際通貨基金(IMF)は「期待以上」と評した。

半面、経済は冷え込み失業が増えた。貧困率は5割を上回る。それでも多くの世論調査で過半に近い国民が政権を支持している。

アルゼンチンは経済の停滞が続き、過去にデフォルト(債務不履行)を重ねた。ミレイ氏は改革の意義を国民に説く。痛みを強いてでも経済の復活を目指す「ショック療法」が受け入れられている。

人気取りのばらまきに走る政治家と一線を画すリーダーとして、注目に値する。ただ有権者の我慢には限りがある。支持をつなぎ留めるには海外からの投資の誘致などで経済を底上げし、人々の暮らしを上向かせねばなるまい。

ミレイ氏はトランプ次期米大統領と懇意で、米大統領選後に最初に面会した外国首脳だ。主張はトランプ氏や同氏を支持する実業家イーロン・マスク氏と似通う。「アルゼンチンのトランプ」と呼ばれ、過激な言動に危うさも漂う。

温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に否定的な立場でもトランプ氏に近い。11月の第29回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP29)ではアルゼンチンの代表団は交渉から離脱して帰国した。

同国は南米大陸でブラジルに次ぐ大国で、20カ国・地域(G20)の一員だ。多国間協調に水を差すような動きは心配だ。トランプ氏と共鳴する形で不安要素が増えることがないよう望みたい。

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