月の裏側の土の試料採取をめざす中国の無人探査機「嫦娥(じょうが)6号」が3日、南部・海南島の文昌宇宙発射場から打ち上げられた。試料を地球に持ち帰る「サンプルリターン」を月の裏側で成功すれば、史上初となる。

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 月は常に同じ面を地球に向けて回っており、裏側は地球との交信が難しい。3月に先行して打ち上げた衛星「鵲橋(じゃっきょう)2号」が通信の中継を担う。探査機は月の南極付近のクレーターに着陸し、エリアや年代の異なる試料を持ち帰ることをめざす。欧州宇宙機関(ESA)やフランス、イタリア、パキスタンの装置も載せている。

 習近平(シーチンピン)指導部は世界の宇宙開発をリードする「宇宙強国」の目標を掲げている。2019年に「嫦娥4号」を世界で初めて月の裏側に着陸させ、裏側探査をリードしてきた。2020年には「嫦娥5号」が月の表側の試料のサンプルリターンに成功。月の火山活動がそれまでの想定より遅くまで続いていた可能性が高いことが分かるなど、成果を上げた。

 科学的には、月の極域付近で凍っているかもしれない水の存在や、表と裏との地殻構造の違いが大きな謎になっている。今回の探査が順調に進めば試料が地球に届くのに50日間あまりかかるといい、謎の解明につながるかが注目される。(上海=小早川遥平)

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