ロシアのプーチン大統領は19日、モスクワで大規模な記者会見を開催した=ロイター

ロシアのプーチン大統領は19日、首都モスクワで大規模な記者会見を開いた。ロシアが侵略を続けるウクライナとの停戦について「交渉と妥協の用意がある」としたうえで、ウクライナも妥協が必要だと言及した。ウクライナ側に譲歩を促す狙いがあるとみられる。

侵略「目標達成に近づく」

会見はプーチン氏が記者や国民の質問に応える年末恒例の行事で、国営テレビで中継された。ウクライナへの侵略は「目的達成に近づいている」と戦果を誇示した。

ロシア軍はウクライナ東部ドネツク州などで犠牲をいとわず攻勢をかけている。プーチン氏は「戦況が劇的に変化している。日々、平方キロメートル単位で前進している」と述べ、制圧地域の拡大を強調した。

プーチン氏は6月のロシア外務省での演説で、停戦条件に関してロシアが一方的に併合を宣言したウクライナ東・南部4州からのウクライナ軍の撤退や同国の北大西洋条約機構(NATO)への加盟放棄を挙げていた。

トランプ氏と「いつでも会う準備」

2025年1月に就任する米国のトランプ次期大統領について「いつでも会う準備がある」と述べた。具体的な時期は言及を避けた。トランプ氏はかねて停戦交渉の仲介に意欲を示している。同氏とは4年以上話をしていないという。

ロシアが支援を続けてきたシリアのアサド政権が今月に崩壊し、アサド前大統領はロシアに亡命した。アサド氏とはまだ会っていないものの「必ず話をするつもりだ」と語った。シリアでのロシア軍駐留の継続に関しては、シリア暫定政権との利害関係を見極める考えを明らかにした。

ロシア経済「インフレが懸念」

プーチン氏はロシア経済について「全体としては安定している」としつつも「インフレが懸念だ」と指摘した。

ロシアはウクライナ侵略の長期化に伴う人手不足が深刻で、人件費の高騰がインフレ率の上昇につながっている。11月の消費者物価指数は前年同月比8.9%上昇となり、10月(8.5%上昇)から伸び率が拡大した。

米国など西側諸国の制裁の影響により通貨安も進行している。米財務省は11月、ロシアの大手銀行ガスプロムバンクなど複数の金融機関を新たに制裁対象に加えると発表した。通貨ルーブルは一時、対ドルで1ドル=約110ルーブル台に下落。ロシアがウクライナ侵略を開始した直後の22年3月以来の安値圏となった。

ルーブル安は輸入企業にとって調達費用などの増加につながり、国内のインフレを一段と加速させる要因となる。生活コストの上昇は国民の不満に直結しかねない。

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