プーチン大統領=2021年5月撮影

 ウクライナ侵攻が開始以来2年2カ月を超えたロシアのプーチン大統領(71)が7日、通算5期目に入った。就任演説でロシアの「未来」や「発展」など前向きな言葉をちりばめ、愛国心を鼓舞し国民の潜在的な不安払拭に努めたが、戦況や経済は流動的。正教会の威光を活用した現代の新たな「皇帝」として、長期支配を貫徹する戦略のようだ。(編集委員・常盤伸)

◆大統領通算5期目に…2年後にスターリンを超える長期政権

 憲法規定ではプーチン氏は今後2期12年間、2036年まで統治可能だ。ソ連時代も含めロシアの長期独裁者といえばスターリンだが、「最高指導者」だった期間は長く見積もっても26年間ほど。2000年に初当選したプーチン氏は2年後にスターリンを超えるのは確実。2期目を全うすれば、歴代皇帝で最長だった18世紀のエカテリーナ2世の在位期間を上回る。  これに関連して注目すべきは、就任式を巡るメディア報道だ。クレムリンでの就任式後、「生神女(しょうしんじょ)福音大聖堂」で行われたロシア正教会のキリル総主教による祈とう会に出席。政府系テレビはこの模様を初めて実況中継したのだ。  総主教はプーチン氏を、国民の間で人気が高い中世ロシアの英雄アレクサンドル・ネフスキーにたとえ、「世紀末まで」権力の座にとどまることを祈っていると述べた。大衆紙コムソモリスカヤ・プラウダは、総主教の発言全文を掲載。限りなく皇帝に近い、国父のようなプーチン像を刷り込むプロパガンダの狙いが見え隠れする。

◆不安要因は? ウクライナ侵攻で死傷者約50万人超えたとの見方も

 ではプーチン体制は盤石なのか。長期にわたる反欧米の愛国プロパガンダが奏功し国民の支持は高水準だが、政権は総動員に踏み込めない。都市部の市民の多くは消極的支持で平静を装っているからだ。ウクライナ侵攻によるロシア側の死傷者数は、旧ソ連が9年間のアフガニスタン侵攻で出したのを上回る約50万人との見方もあり、社会の底流には不満も鬱積(うっせき)している。  英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のジャック・ワトリング研究員は、対ロ制裁などの影響で、ロシアの戦闘力は来年がピークで、26年以降は急激な低下が始まるとの分析を報告書で示している。プーチン氏が演説で国民に提示したさまざまな公約が実行される保証はどこにもない。 

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。