米紙ウォールストリート・ジャーナルは14日、バイデン米政権が10億ドル(約1560億円)相当の武器をイスラエルに供与することを米議会に通知したと報じた。政権は、イスラエルの軍事作戦に抗議する形で武器輸送を一部制限したばかりだが、両国間の溝をこれ以上深めたくない意向の表れだと、同紙は指摘している。

 提供するのは、戦車で使う弾薬や戦闘用車両、迫撃砲弾などだという。バイデン政権は、イスラエルがパレスチナ自治区ガザ最南部ラファで大規模な地上作戦をすれば民間人に大きな被害が出るとして、作戦に反対してきた。ラファの作戦で使われる可能性のある爆弾の輸送1回分をすでに差し止め、イスラエルがラファ侵攻を強行すればさらなる武器供与の制限に踏み切る考えも示してきた。

 ただ、同時にイスラエルの防衛への関与は続けるとも強調し、特定の爆弾以外の提供は制限していない。イスラエル支持の世論が根強い米国では、共和党を中心に、武器供与の制限は米・イスラエルの敵対勢力を利するだけだという批判の声があがっていた。今回の武器供与は、こうした批判をかわす一方で、イスラエルに作戦の再考を促す警告の効果を自ら弱めるものになりそうだ。

 米NBCは14日、複数の米当局者の話として、イスラエル軍がラファ周辺で地上部隊を増強しており、作戦を拡大する可能性があると報じた。米当局は、イスラエルが近日中に大規模侵攻に踏み切るかどうかについての公式な評価はしていないという。同日にはラファ東部の住宅地でイスラエル軍の車両が目撃されたと報じた。ロイター通信も、14日に同軍の戦車がラファの複数の住宅地まで進んだと伝えている。(ワシントン=下司佳代子、カイロ=其山史晃)

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