<連載 ミャンマーの声>  徴兵制実施が発表されたミャンマーから避難する若者の保護を日本政府に働きかけてほしいと、在日ミャンマー人らが3月以降、自分たちが住む自治体の議会に陳情書を提出している。北海道から沖縄まで17都道府県の40議会を対象とし、11議会への提出を終えた。国軍のクーデターから3年余り。広い地域でミャンマー人が行動を起こしているのはなぜか。(北川成史)

東京・上野公園近くで7日、徴兵制(CONSCRIPTION)反対のプラカードを掲げ、デモ行進する在日ミャンマー人ら

◆18歳以上に導入、反発と動揺

 ミャンマーでは2021年2月にクーデターで実権を握った国軍に対し、少数民族や民主派の武装組織が昨年10月以降、攻勢に出ている。劣勢の国軍は今年2月、18歳以上に対する徴兵制の実施を発表した。反発と動揺が広がり、国外脱出を図る若者が続出。自殺者も出ていると伝えられる。  この状況を危惧した在日ミャンマー人らの有志が、共通の内容の陳情書を各地で提出しようと動いた。

◆「国民同士に殺し合いをさせる卑劣な制度」

 陳情書は徴兵制について「民主主義を希求する国民同士に殺し合いをさせる卑劣な制度。徴兵を拒否すれば禁錮刑もあり、若者が絶望している声が聞こえてくる」と非難し「日本に在留する技能実習生や留学生も(制度の)例外ではない」と強調。今後の避難民増加を予想し、地方議会から日本政府に、対応を促す意見書を出すよう求めている。  政府に促す内容としては
(1)ミャンマー人の在留延長を認めたクーデター後の緊急措置を継続する
(2)ミャンマー避難民を積極的に受け入れる
(3)国際社会と連携し、徴兵制中止を国軍に働きかける
(4)留学希望者らへの奨学金プログラムを設ける
の4点を挙げている。

◆9都道府県の11議会に提出

 日本人の支援も得ながら、これまで札幌市、茨城県つくば市、千葉県松戸市、東京都江東区、練馬区、名古屋市、京都市、大阪市、兵庫県西宮市、神戸市、沖縄県糸満市の9都道府県11議会に陳情書を提出したという。  このうち糸満市議会は3月26日、政府への意見書を全会一致で採択した。採択に向けて中心的に動いた浦崎暁市議(共産)によると、同市にもミャンマー人の技能実習生たちがいる。  浦崎氏は「理不尽極まりない徴兵制は、全国各地で働き暮らすミャンマーの方々を一層の不安に陥れている。日本の政治は彼らの苦難に向き合い、苦難軽減のために全力を挙げなければならない」と主張。意見書採択の動きが広がり、政府を動かすよう期待した。

札幌市議会の各会派を回り、意見書提出などの協力を求めるミャンマー人ら=北海道新聞撮影

◆「ミャンマーで絶望している人々に代わって」

 各地の同胞に陳情書提出を呼びかけている在日ミャンマー人のキンゼッヤーミンさんは「自由のないミャンマーで絶望している人々に代わり、私たちが声を上げる」と決意を示す。  クーデター後、日本に渡るミャンマー人が相次ぎ、昨年末現在、前年末比54%増の8万6000人余りが全国に在留している。  「地方のミャンマー人も母国の人々のために何かしたいと思っている。陳情書の提出ならどこにいても参加できる」とキンさんは語り、こう願う。「ミャンマーに関する報道は減っているが、大変な状況が続いている。その事実を幅広く、日本の人に知ってほしい」 

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