ある日、テニスコートで
カメムシってどんな虫?
桃は販売できない状態に…
ことしの発生状況は?
あなたの地域の発生状況は?「注意報マップ」
殺虫剤 売り切れる店も
なぜ大量発生?今後どうなる?
カメムシが室内にいたら?
大きさは1センチ程度、主に春から秋にかけて活動するということです。ふだんは山林に生息し、スギやヒノキなどを餌にして繁殖していますが、山林での餌が不足すると果樹園に飛来し、桃や梨、びわなど果物を吸って被害をもたらすため、「病害虫」とされています。外敵から身を守るため、刺激を与えると悪臭を放つ性質がありつまんだり、つぶしたりすると体から液体状のものを出し、においが出るということです。寿命は長くて1年ですが、秋に大量に発生すると多くが越冬し、次の春に発生する傾向があるということです。
深刻なのは、果物など農作物への被害です。千葉県柏市にある農園では今月、栽培している桃でカメムシの被害を受けました。農園を運営する男性によりますと、例年、桃の実に網をかけてカメムシの被害を受けないよう対策をしているということです。しかしことしはカメムシの数が多く、栽培している桃のうちおよそ半分が販売できない状態になってしまったということです。
男性が今月11日に撮影した写真では、まだ青い実に複数のくぼみができている様子が確認できます。
男性「ことしは例年より早い4月下旬ごろからカメムシが出てきました。傷んだ桃は木から落とすしかなく、販売できずに残念です」
広島県にある県西部農業技術指導所では、各地の農園など県内7か所の地点でカメムシの定点調査を行っています。調査では、カメムシをおびきよせるにおいをつけた専用の器具を使ってカメムシを捕獲します。
おびきよせられたカメムシが飛んでくると、容器中央に立てた壁に当たって下に落ちる仕組みです。捕獲したカメムシの数は、増えているのか。尾道市瀬戸田町で5月の2週間分の調査結果を集計したグラフです。
平年と比較すると、1週目はおよそ3倍、2週目ではおよそ5倍と、増えているのが分かります。広島県内では平年より少ない地域もある一方、呉市蒲刈町では例年の10倍以上にのぼるなど、地域差もみられるということです。調査にあたった担当者は、こう話しています。
広島県西部農業技術指導所 川辺翔瑚 技師「一番大きな理由としては、春先の気温が高かったこと、カメムシの活動の動き出しが早かったのではないかと見ています。農家さんに対しては園地の見回りを行っていただいて、増加が確認されれば、早めの薬剤防除を行うことが有効です」
あなたが暮らす地域の発生状況はどうなっているのでしょうか。果実に被害をもたらす「カメムシ」が多く発生するおそれがあるとして、関東から九州にかけての全国26の都府県では「注意報」を発表し、農家に対策の徹底を呼びかけています。22日時点で注意報が発表されているのは、次の26の都府県です。(お住まいの地域を探す際、スマホのかたは指でピンチアウト(拡大)してください)
▽愛媛▽神奈川▽鳥取▽山口▽和歌山▽高知▽徳島▽福岡▽香川▽京都▽兵庫▽熊本▽長崎▽大分▽愛知▽岡山▽千葉▽茨城▽埼玉▽栃木▽大阪▽奈良▽石川▽滋賀▽岐阜▽東京
農林水産省によりますと、5月末までの時点で注意報が発表されている都道府県の数としては、この10年間で最も多いということです。
また、農林水産省は今月15日、「関東のほか、東海、近畿、中国、四国、九州の一部で果実に被害をもたらすカメムシの発生が多くなることが予想される」と発表しています。農林水産省は「カメムシの飛来の状況は地域によって異なる」としたうえで、被害を受けるおそれがある農作物を栽培している農家に対しては「都道府県の発表する情報を参考にしつつ、果樹園内の見回りをしっかりと行い、飛んできている場合には農薬を使用するなど対策を実施してほしい」と話しています。
対策を進めようと、殺虫剤を買い求める人も増えています。茨城県水戸市のホームセンターでは、カメムシ用の殺虫剤が先月、売り切れたということです。カメムシ用の殺虫剤の売れ行きはこのホームセンターの系列店全体で、去年の同じ時期の10倍以上となっていて、現在は在庫がなく、メーカーからの入荷のめどもないということです。
客からの問い合わせに対応するため、店舗では、カメムシにも効果がある別の殺虫剤の棚に「カメムシにも効く」というポップを貼り付けて、客に紹介することにしました。
「山新グランステージ水戸ホームセンター」菊池大貴副店長「匂いや見た目の不快感から駆除したいという問い合わせが多いです。例年、カメムシ特設コーナーを設けることはないのですが、今後、設置も検討しています」
こうした中、やはり気になるのは、カメムシの発生状況と今後の見通しです。カメムシの生態にも詳しい農研機構植物防疫研究部門 新井朋徳グループ長に話を聞きました。
A.ポイントは“スギやヒノキの実”と“暖冬”です。去年秋はスギやヒノキが豊作で、それを餌にするカメムシが大量発生しました。そしてこの冬の“暖冬”も影響しています。個体の多くが越冬し、今の大量発生につながったとみています。越冬量の調査でも、過去10年で最も多かった地域も複数ありました。
A.越冬したカメムシは蓄えた養分を使い切り「空腹状態」になっています。このため餌を求めてあちこちと飛び回ります。暗くなってから移動する場合が多く、夜、明かりがあるところへ集まる傾向もあることから、結果的に都市部にも多くやってきているとみられます。
A.正確に予測することは難しいですが、カメムシがこれから餌とするのが「桜」や「桑の実」です。ことしは発生が多いので、これらを早く食べ尽くしてしまった場合、餌を求めてあちこち飛び回り、カメムシを多く見かけることになる可能性があります。夏になれば山でスギやヒノキが食べられるようになるので、それまでの間に、カメムシが桜や桑の実を食べ尽くすかどうか次第と考えています。
A.まず農家については、発生源をたたくことが難しいため、カメムシ類が来てから、薬剤で防除することが基本的な対策となります。次に都市部で室内に入り込んできたりした場合ですが、経験上、つまんだり、つぶしたりすると、高い確率で“におい”を放ちます。においが気になる場合は、つぶしたりせず、直接、素手で触れるのを避けてください。
カメムシが室内に入っていた場合、どうすればいいのか。害虫の専門家は、素手では触らずペットボトルなどの道具を使って除去することが効果的だと指摘します。
南九州大学環境園芸学部 新谷喜紀教授「カメムシがにおいを発するのは外敵から襲われた時に食べられないように守るためだと考えられる。カメムシは天敵に襲われたのか、人間に触られたのかを区別せず、物理的な刺激を受けるとにおいを出すことになる」
カメムシは白っぽい色の壁や洗濯物の衣類などに集まりやすく、複数匹が集まるとさらに仲間を呼ぶ習性があるということです。また、夜間には蛍光灯の光がある所に飛んできやすい一方、LEDライトの光のもとにはほとんど集まらないので、照明器具を取り替えることも効果的だと指摘しています。もし室内に入ってきた場合には、素手で触らずに専用の殺虫剤を使ったり、半分に輪切りにしたペットボトルの中にそっと追い込んで捕獲したりすることを勧めています。
新谷教授「手でつまむと、どうしても刺激を受けてにおいを発してしまう。手で直接触れずに刺激を与えないようにしながら除去することが一番よいです」
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