オリーブの主産地の天候不順で値上がりが続いている(都内のスーパー)

オリーブ油の値上げが続いている。主要な産地であるスペインで原材料のオリーブが2年連続で不作となっているためだ。店頭販売価格が上昇するのに伴い、販売数量も減少している。メーカー各社は顧客のオリーブ油離れを防ごうと対策を打っている。

スペインで干ばつ、不作続く

全国のスーパーなどの販売データを集めた日経POS(販売時点情報管理)情報によると、「エキストラバージンオリーブ油」は2022年5月ごろから平均価格の上昇が続いている。22年3月は521円だったが、24年2月には34%上昇し700円に達した。一方で販売数量は22年3月から24年2月までに18%減少している。

売れ筋の商品も価格上昇のあおりを受けている。日清オイリオグループの「BOSCOエキストラバージンオリーブオイル456グラム」は23年3月〜24年2月の1年間の平均価格が22年3月〜23年2月と比べ18%上昇。一方で年間販売数量は同4%減った。J―オイルミルズの「AJINOMOTOオリーブオイルエクストラバージン200グラム瓶」も直近1年間の平均価格は前年同期比で21%上昇し、販売数量は10%減少した。

主因は世界のオリーブ生産の4〜5割を占めるスペインでの不作だ。オリーブは温暖で適度に雨が降る地中海性気候での栽培が好まれる。22〜23年はオリーブの収穫量に影響する春の開花時期に雨がほとんど降らなかった。

欧州委員会によると22〜23年のスペインの生産量は前年度の45%ほどにとどまった。23〜24年も例年の5割程度にとどまる見込みだ。原料高に対応してオリーブ油の値上げを実施してきた食用油メーカー各社は今春、もう一段の値上げを発表している。

2年間の不作でオリーブの在庫量は逼迫している。今後生産量が回復しても高騰した相場の先行きは不透明だ。

そうめん、カツオのたたき……新レシピで知恵絞る

オリーブ油は洋食に使われるのが一般的で、キャノーラ油といった汎用油に比べて用途が限られる。重量あたりの販売価格が通常の食用油より数倍高く、嗜好品の側面もあることから消費者離れが進んでいる。度重なる値上がりをうけた消費者離れを食い止めようと、食用油メーカーは新商品づくりやレシピの提案などで知恵を絞っている。

J―オイルミルズは2月、ブレンド油で価格を同容量のオリーブ油商品の3分の2ほどに抑えた「AJINOMOTOオリーブオイルたっぷりクッキングオイル」(600グラム)を発売した。オリーブ油6割に対しキャノーラ油4割を混ぜたもので、原材料価格を抑えつつオリーブの風味を味わえる。

J―オイルミルズ家庭用油脂マーケティング部長の鈴木篤史氏は「料理に生のままかけても、エキストラバージンオリーブ油と風味の違いは感じられない」と胸を張る。

ブレンド品拡充の背景には先行品の売れ行き好調がある。日経POS情報によると、同社のブレンド油「AJINOMOTOユーロリーブ」(910グラム)は24年2月の販売数量が前年同月の2.4倍だった。日清オイリオグループも2月からブレンド品を初めて販売している。

Jーオイルミルズはオリーブ油の食べ方の提案として和食のそうめんにあうレシピを提案している

各社は新しいレシピの提案にも力を注ぐ。定番のイタリア料理などだけではなく、和食での活用機会もうかがう。J―オイルミルズはナスやパプリカ、ズッキーニなどの夏野菜をオリーブ油で素揚げし、冷水でしめたそうめんに盛り付けたレシピなどを提案している。日清オイリオグループもカツオのたたきにオリーブ油をかける食べ方を紹介する。

販売金額、家庭用食用油の2割

エキストラバージンオリーブ油はオリーブの果実を搾ってろ過しただけのもので酸度が100グラムあたり0.8グラムを超えない品質のものを指す。規格に満たないオリーブ油は精製されて「ピュア」製品として販売される。

国内販売される家庭用オリーブ油のうち8割以上がエキストラバージンオリーブ油だ。オリーブ本来の香りや風味があり、カルパッチョなど生の食材にそのままかけて食べるのに向いている。ピュア製品は加熱調理に向くとされる。

日本でオリーブ油が広まったのはバブル期の「イタメシ」ブームが始まりだとされる。日清オイリオグループによると2022年度に家庭用食用油の国内市場(金額ベース)の約2割を占めた。汎用油であるキャノーラ油と同規模で、食の多様化に伴い食卓の主力に育っている。

(鷲田智憲)

▼日経POS情報 日本経済新聞社が全国のスーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアから独自に収集したPOS(販売時点情報管理)データベースのサービス。1985年から加工食品や酒類、日用品など290万を超える商品の販売実績を蓄積している。
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