「オアゲパン」のアイデアが採用となり、試作したパンの写真を手に喜ぶ(左から)川畑さん、吉田さん、森本さん、米沢さん=滋賀県長浜市田村町の長浜バイオ大で2024年5月15日午後4時54分、長谷川隆広撮影

 犬と一緒に食べられるおやつがあればいいのに……。そんな愛犬家の願いを実現するプロジェクトが進行中だ。滋賀県守山市のパン店「さすがにオテアゲ」と長浜バイオ大(長浜市田村町)が、人と犬が食べることのできるおやつを共同開発している。同大で15日、学生が考えたおやつ5案が発表された。犬の食性などが考慮されており、同店と同大が審査し、いずれも商品化を目指すことになった。

 同店は2020年に守山市でオープンした高級食パン店。店の外壁に看板犬「オアゲ」の巨大な絵が描かれていることから「犬用のパン店」と間違われることも多く、「それなら犬も食べられるおやつを開発してみよう」と発想が浮かんだ。

 しかし、人と犬では食性や必須栄養素、代謝が異なるなど、犬にとって安全な食品を開発するノウハウが同店にはなく、専門知識を有する同大アニマルバイオサイエンス学科に協力を依頼した。

 依頼を快諾した河内浩行教授(食品分子機能学)が同学科の2、3年生に声を掛けると、有志として計20人が参加することになった。4月には大学に招いた獣医師の講演で、犬に与えてはいけない食材や開発の注意点などを教わった。

 有志学生は日ごろの授業や獣医師から学んだ知識を活用し、おやつのアイデアを検討。食パンやドーナツ、マフィンなどの製造を念頭に、犬がお腹を壊す一因となる乳糖が少ないヤギミルクやグルテンを含まない米粉を使う案などが発表された。犬にも与えるには、炭水化物や塩分、脂質などを抑える必要があり、人間には薄味に感じるため、ジャムをセット販売するアイデアも出た。

 同店と河内教授らが5案の審査を行い、単独で1案、ほかは2案ずつの組み合わせで商品化を目指すことになった。単独1案で採用されたのは、川畑朱璃さん、吉田優里さん、森本ゆり子さん、米沢実佑さん(いずれも3年)で結成した「いぬぱん」チームのアイデア。看板犬「オアゲ」をモチーフとした食パン「オアゲパン」を作る案だ。

 脂質を落とすために、同店の食パンから動物性バターは食用ヤシ油に、生クリームは脱脂粉乳に変更した。パンの断面にオアゲの顔が現れる仕掛けとし、耳を全粒粉、目と鼻は竹炭パウダー、顔はニンジンかカボチャを使って描く。実際に柴犬(しばいぬ)の顔が現れる食パンを試作し、発表でその写真を披露する力の入れようで、審査で高く評価された。4人は「みんなで考えた案が通ってうれしい。犬も食べられるという限られた材料の中で、パンの中に顔を描くことが難しかった」と振り返った。

 同店で製造を担当する太附正和さん(58)は「どの案もよく調べてあった。いろいろなアイデアを出してもらったので、それを参考にレシピを作っていく」と話し、早ければ5月中にもまず「オアゲパン」から試作するという。その後、同大で試作品の成分分析や試食を行い、人と犬にとって栄養素などが適切かどうかを確認した上で、7月中の発売を目指す。【長谷川隆広】

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