全国的にキャベツの価格高騰が続いている。4月ごろから上昇し、直近は例年の倍ほどで推移。天候不順の影響で他の野菜も高値傾向となっており、家計や飲食店の経営にも影を落とす。
福岡市中央区の青果店「日本一の新鮮市場かいぶつくん赤坂店」の店頭には21日、キャベツが1玉268円(税別)で並んでいた。店によると価格は例年の倍で、他の野菜も例年より高い値札が目立つ。金澤雄大店長(40)は「こんなにどの野菜も高いなんて経験したことがない。利益率を下げてできるだけ安く売っているので、商売は苦しい」。来店した女性(52)はキャベツの値段を確認して職場の同僚に伝えるといい、「安い店の情報をみんなで共有して高騰を乗り切りたい」と話す。
長崎県内で系列含め11店を展開するスーパー「ジョイフルサン」では、キャベツ1玉あたりの価格が3月は約250円だったが、4月中旬から約300円、5月中旬ごろには約500円になった。買い控える消費者も多く、1玉を半分や4分の1にカットしたり、価格の変動がない袋入りの千切りキャベツの仕入れ量を平年の1・5~2倍に増やしたりしている。
農林水産省によると、国内の主要卸売市場の20日時点の平均価格は、前年の同じ時期と比べてキャベツが約2・5倍、ブロッコリーは約1・8倍、にんじんは約1・5倍となった。また、福岡市中央卸売市場青果市場によると、入荷量はキャベツが前年比約3割減、ブロッコリーが約5割減と品物自体が少ない。
全国的な背景には、産地の天候不順がある。2~3月にかけて関東や中部地方などで雨量が多かった。九州では暖冬で生育が早まったが、4月の多雨の影響で一転して生育不良に。同市場の卸売会社「福岡大同青果」(福岡市)の担当者は「キャベツは関東など九州産以外の品物に切り替えができていないこともあり高値が続き、他の野菜も出荷量が少ないため、全体的に価格が高い傾向」という。
約2カ月続く高騰の影響は飲食店にも広がっている。福岡市博多区の大衆居酒屋「さんじ中洲店」では、看板メニューのもつ鍋や炊きギョーザ用に大玉のキャベツを仕入れる。以前は1玉200円ほどだったが、現在は500~600円。1人前30~40円だったキャベツの原価が100円ほどに上昇し、花城龍一店長(32)は「できるだけ捨てる部分が出ないように気をつけて調理している。油なども倍以上の値段になっているので、値上げしようか悩んでいる」と苦い表情だ。
野菜が欠かせない長崎名物のちゃんぽんを提供する長崎市内の中華料理店「天天有」の官龍政(かんたつまさ)店長(56)も「今後もキャベツの値上がりが続いたら、料理の価格にも影響が出るかもしれない」と語る。
生産者も気をもむ。福岡県糸島市のキャベツ農家、西原新太郎さん(40)によると、「雨の影響などで生育が進まず、出荷量は昨年の50%くらい」というが、現状は単価が高いため収入への影響は少ない。ただ「国産の状況を受けて安い輸入産が増えてくるかもしれない。高騰の反動が怖い」。
JA糸島の担当者は「6月には徐々に価格が落ち着く」とみている。だが、生育の遅れが再び起きると安定的な出荷が見込めなくなるだけに、梅雨シーズンを前に先行きは見通せない。【田崎春菜、百田梨花】
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