あごの骨を骨折した男子生徒の診断書=保護者提供

 埼玉県桶川市の市立桶川中学校で今春、バスケットボール部の男子生徒(13)が試合中にあごを骨折し全治1カ月のけがをしたにもかかわらず、男性顧問が保護者に連絡せず、病院も受診させていなかったことが毎日新聞の取材で判明した。文部科学省が策定した「学校事故対応に関する指針」は、学校の活動で事故が起きた場合、応急手当てや速やかな保護者への連絡を求めており、市教委や学校は「対応が適切でなかった」と男子生徒に謝罪した。

 けがをした男子生徒の保護者によると、4月29日、県内で行われた他校との試合中、相手選手の頭が顔に強くぶつかった。あごに激しい痛みを感じ、ベンチに戻って他の選手と交代。患部を冷やして安静にしていた。この日、顧問から健康状態の聞き取りは無かったという。

 痛みが続いたため5月1日に病院を受診したが、医師からは「様子を見ましょう」と言われ帰宅。その3日後にあった別の試合で、相手選手とぶつかり再びあごを強打した瞬間、頭部全体に激痛が走った。試合後も痛みが治まらず、体育館の2階で泣きながら座っていると、顧問から「立て」と指示された。

 「痛すぎて無理です」。男子生徒はそう答えたが聞き入れられず、階段を下りて体育館を出るよう促された。壁に設置された鏡の前で「眼鏡を掛けて(自分の顔を)見ろ。(骨は)曲がってないよな。だから折れてない」「あご(の骨折)と歩けるかは関係ないだろ」などと叱責もされたという。顧問は保護者や医療機関に連絡することなく、男子生徒を帰宅させた。

 男子生徒はその日のうちに病院を受診し、CTスキャンであごの骨折が判明した。全治1カ月だった。医師からは「4月29日の試合で骨折し、5月4日の試合で患部にさらに衝撃が加わったとみられる」と診断された。母親(48)は「なぜ病院に連れて行ったり、保護者に連絡したりしなかったのか。どうして息子からきちんと話を聞かず、無理やり歩かせたのか」と憤りをあらわにする。

 桶川市教育委員会は取材に「保護者に連絡を取らなかった顧問の対応は適切ではなかった」と回答した。学校の担当者は「首から上にけがをする危険な事故で、すぐに医療機関の受診を検討しなかったのは適切でなかった。顧問本人も反省の態度を示している」と釈明。その上で「乱暴な言葉遣いをしたり、高圧的な態度を取ったりはしていない」と顧問による叱責は否定した。【加藤佑輔】

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