milatas - shutterstock -

<「いい大学」に入れば幸せになれるか。人気予備校講師が受験生たちに必ず伝えている「残念ながら、皆さんは誰一人幸せにはなれません」の真意>

どうすれば「幸せな人生」を送れるのか。予備校講師の肘井学さんは「志望校に合格して、立派な職業に就いても幸せになれるとは限らない。幸せな人とは、受験に成功した人が『なる』ものではなく、今ある幸せに『気づく』ことができる人だ」という――。

※本稿は、肘井学『10代のきみに読んでほしい人生の教科書 豊かに生きるための33のヒント』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

「この中で、幸せになりたい人は、手を挙げてください」

この記事を読んでいるあなたは、今、何歳でしょうか? 13歳なら33歳までのヴィジョン、16歳なら36歳までのヴィジョン、24歳なら44歳までのヴィジョンを描いてみてください。ようは、20年かけてなりたい自分を想像します。

1年がんばっただけでは、たいして変わらないかもしれません。しかし、10年続けて何かに取り組んでみてください。そして、20年あきらめずに取り組んでみてください。

20年もあきらめずにがんばれる人はなかなかいません。20年後の自分を想像してがんばれる人もなかなかいません。だからこそ、20年あきらめずに見続けた夢は、何らかの形で日の目を見ることになります。

どうせなら、自分の一番やりたいことを選んでください。その夢が大きければ大きいほど、自分の成長度合いも大きくなります。

私が全国で講演をする際に、必ずと言っていいほど、尋ねる質問です。「この中で、幸せになりたい人は、手を挙げてください」と言うと、講演を聴いているほぼ全員が挙手します。

少し意地悪な質問になりますが、その手を挙げた人全員に、「残念ながら、皆さんは誰一人幸せにはなれません。皆さんのみならず、私も含めて、この場にいる誰一人幸せになることはできません」と続けます。

当然聴いている人たちは唖然あぜんとしますが、私の発言の意図を続けて説明します。

【幸せは「なる」ものではなく「気づく」もの】

なぜならば、幸せというのは、「なる」ものではなく、「気づく」ものだからです。私も若いころは、何かをしたり、手に入れたりすると、幸せになれるものだと思い込んでいました。

良い大学に入れば幸せになれる、立派な職業に就けば幸せになれる、お金持ちになったら幸せになれる、有名になったら幸せになれる、そう思い込んで生きてきました。

一方で、世の中を見渡すと、これらの要素が必ずしも幸せをもたらすものではないことが、わかるはずです。良い大学に入っても不幸な人もいます。

世間で立派と言われるような職業に就いても、お金持ちになっても、犯罪やスキャンダルに手を染めて、不幸になる人もいます。

あるいは、かわいい彼女ができたら幸せになれる、きれいな奥さんと結婚したら幸せになれる、子どもが生まれたら幸せになれる、そう思い込んでいた時期もありました。

しかし、これらの要素も、必ずしも幸せをもたらすものとは限りません。

恋人がいても不幸な人はいるし、きれいな奥さんやかっこいい旦那さんと結婚しても、家庭を壊して不幸のどん底に落ちる人がいます。子どもが生まれても、独身時代と比べて自由がなくなったことなどで不幸を感じる人もいます。

では、一見幸せをもたらしてくれそうなこれらの要素を持っていても、なぜ不幸に感じてしまう人が出てくるのでしょうか。

【人はどれだけ幸せでも"慣れて"しまう】

その理由は、人は慣れる生き物だからです。いわゆる良い大学に受かって、その当初はとてもうれしい状態だとしても、通っているうちにそれが当たり前になって、気づいたらその状態に慣れてきます。

立派な職業に就いても、最初のうちはその喜びにひたっていますが、気づいたらその状態に慣れて、当たり前になってしまいます。

すてきな恋人ができてもそうです。気づいたらその状態に慣れて、当初はありがたかったその存在が当たり前の状態になってくる。

結婚しても、子どもが生まれてもそうです。あれだけ欲したパートナーや家族であっても、人間は、気づいたらその状態に慣れて、感謝の気持ちを忘れてしまう傲慢な生き物なのです。

では、どうやってこの不幸な状態から脱したらよいのでしょうか。

本当は幸せにもかかわらずその状態に慣れて、当たり前だと思ってしまう傲慢さを打ち破る唯一の方法は、今の有り難さに気づくことです。

「ありがとう」という言葉はもともと「有り難い」、すなわち、相手からしてもらったことがめったにない、有り難いものであることを由来としています。今あるものに目を向けてみてください。

それらのものは、あなたにとって当たり前ですか?

【「大切な存在」がいるのは当たり前ではない】

当たり前のようにいてくれる、親、兄弟、子ども、パートナー、恋人などの存在は、じつは当たり前ではありません。一人ひとりの存在がいなくなった状態を想像してみてください。

今一瞬だけを考えると、目の前からいなくなってせいせいするような人もいるかもしれません。しかし、長い目で見ると、ほとんどの人が、あなたを何らかの形で助けてくれて、サポートしてくれる存在であることでしょう。

今、あなたが子どもの立場ならば、親が命がけで産み、育ててくれたおかげで、あなたは子どもでいられます。親ならば親で、子どもがいてくれてはじめて親になることができます。

お兄ちゃんなら、弟がいてくれてはじめてお兄ちゃんになれます。弟なら、お兄ちゃんがいてはじめて弟になれる。夫なら妻がいて、妻なら夫がいて、世の中はそうやって回っています。

これから生きていくにあたって、今ある幸せに気づく力を忘れないでください。たとえば、地方で生まれ育ち、第1志望の大学に受かって上京すると、しばらくはその幸せに浸れることでしょう。

しかし、気づいたらその状態に慣れて、当たり前に思ってしまいます。その傲慢さを打ち破るためには、今の幸せに気づいて、その幸せをかみしめるのです。

立派な職業に就いても、お金持ちになっても、「初心忘るべからず」と言われるように、最初のわくわくしていたころを思い出して、今ある幸せに気づく力を大切にしてください。

【「今ある幸せに気づく力」が重要】

それは、恋人ができても、結婚しても、子どもが生まれてもそうです。人間は慣れる生き物で、気づいたら周りの物を当然と思う傲慢さがあります。

そんなときこそ、今ある幸せに気づく、「有り難う」の言葉を、周囲の人にかけてみてください。今の「有り難さ」に気づいたときこそが、まぎれもなく幸せな状態です。

冒頭で説明したように、大きな夢を描いてください。

目の前のことに必死で取り組んでみてください。その結果、何かしらのことを達成できるかもしれません。しかし、それらのものが必ずしも幸せをもたらすとは限らないことも覚えておいてください。大事なのは、今ある幸せに気づく力です。

あなたの根底に、しっかりとした幸福感があれば、どこの世界へ行っても大丈夫です。つねに「有り難う」の精神を忘れないでいることで、必ずやあなたの人生は豊かなものになるでしょう。

【まとめ】
幸せとは、「なる」ものではなく、「気づく」もの。
大事なのは、今ある幸せに気づく力。つねに「有り難う」の精神を忘れずに。

肘井学『10代のきみに読んでほしい人生の教科書 豊かに生きるための33のヒント』(KADOKAWA)(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら。




鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。