子供の約10%が発症するといわれる小児湿疹について、北海道大などの研究チームが発症リスクに関する新たな研究結果をまとめた。1歳半までの乳幼児が発症する小児湿疹には妊娠中の母親が過ごす室内の環境が影響している可能性があり、多くの住宅で使用されているフローリングの床材も要因になるという。

 小児湿疹は子供に現れる皮膚トラブルの総称で、新生児中毒性紅斑やアトピー性皮膚炎などがある。

 研究チームによると、遺伝的要因や子供が過ごす環境要因が小児湿疹の発症につながることが指摘されており、カビや結露が発生するような湿度環境も発症要因となることが多くの研究で報告されている。しかし、妊娠中の母親が過ごす室内環境が産後の乳幼児に与えるリスクについては、これまでほとんど研究されていなかった。

 チームは、環境省が2010年度から全国の親子を対象に実施した「子どもの健康と環境に関する全国調査」(エコチル調査)を使い、11~14年に生まれた子供と母親について1歳半(7万1883組)と、3歳(5万8639組)まで追跡した。

 質問票への回答から、カビの発生した部屋の多さで示す「カビ指数」が高い▽複合フローリング床材を使っている――といった環境に母親が多く接してきた場合、1歳半時点の湿疹の発症リスクが1・2~1・4倍高くなった。3歳児では、妊娠中の環境よりもカビや喫煙者の有無といった産後の室内環境が影響しているとみられることも明らかになった。成果は4月、国際学術誌「Environmental Research」に掲載された。

 研究チームのアイツバマイ・ゆふ北海道大特任准教授(環境疫学)によると、下地材の表面に天然材やシートを張り合わせた複合フローリング床材は多くの住宅で使われている。結露や水漏れで劣化すると目や鼻などの刺激症状を引き起こすアルコール類を発生させることなどが知られており、小児湿疹の発症にも関連している可能性があるという。

 アイツバマイ特任准教授は「フローリング床材の改修は難しいと思うが、出産前からカビの発生防止のために適切な湿度環境の維持を心がけることで、小児湿疹の予防につながる可能性がある」としている。【金将来】

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