北九州市は郷土料理「ぬか炊き」の魅力を全国へ発信しようと、調査研究や発信力を強化する「ぬか炊きの食文化価値の再発見事業」を始めた。関係者は「北九州に来たら必ず食べる郷土料理として、全国区のブランドにしたい」と意気込む。【山下智恵】
危ぶまれる継承
北九州市の台所、旦過市場(小倉北区)にある「百年床 宇佐美商店」では、100年受け継ぐぬか床(ぬかみそ)で煮込んだサバやイワシ、こんにゃくなどのぬか炊きが並ぶ。常連客が「なじみの味」をパック詰めで求める一方、土産物として買う観光客も。鹿児島県から旅行で訪れた山下一平さん(40)は真空パックのサバとスペアリブのぬか炊きを購入。「小倉へ来て初めて食べた。濃い味で米にも酒にも合っておいしかった。酒を飲む父へのお土産にする」と話した。
ぬか炊きは、主に北九州市東部から大分県北部の旧豊前国を中心に江戸時代から伝わっている。各家庭で代々受け継がれる「ぬか床」のぬかを使用した身近な家庭料理として親しまれてきた。
ぬか炊きに代表される「北九州の糠(ぬか)の食文化」は2021年度、文化庁の「100年フード」に選ばれ、131件の中で特に評価が高い有識者特別賞(15件)に入った。だが近年、ぬか床を持つ家庭の減少などからぬか炊きを知らない人も増え、継承が危ぶまれている。
市は、ぬか炊きの知名度を上げて食文化を継承し、地域経済の活性化を目指そうと「食文化価値の再発見事業」をスタートさせ、同庁の2024年度「『食文化ストーリー』創出・発信モデル事業」に選出された。
再発見事業は、発酵食品で健康に良いとされるぬか炊きの成分調査による栄養価の見える化などの調査研究事業▽小学生への食育活動を通じた保護継承事業▽パンフレットや動画作成などの発信事業――で構成されている。6月28日には事業の一環で、ぬか炊き店主や食品科学の専門家などによる有識者会議の第一回会合が開かれた。関係者からは食文化衰退の危機感と発信への期待感の両方について意見が上がったという。会議に参加者した「ふじた」(門司区)社長で北九州ぬか炊き文化振興協会の藤田浩三会長は「北九州でずっと続いてきたぬか炊きを全国に知らしめ、後世に伝えていきたい」と話した。
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