「タンタン、神戸に来てくれてありがとう」
神戸市立王子動物園(同市灘区)で飼育されていた国内最高齢のジャイアントパンダ、タンタン(旦旦、雌)が、3月31日に死んだ。28歳で人間なら100歳近くとされ、「神戸のお嬢様」として長年愛されてきたタンタン。3千以上の献花が寄せられるなど別れを惜しむ声は絶えず、市は5月10日に追悼式を開催する。
中国・四川省で生まれたタンタンは平成12年7月、阪神大震災で被災した子供たちを元気づけようと、現地のパンダ研究施設から雄のコウコウ(興興)とともにやってきた。しかし、繁殖能力がないことが分かったコウコウは返還され、2代目コウコウが来日。タンタンは19年に初めて人工授精に成功し妊娠したが、死産となった。
20年に初めて出産した際は、赤ちゃんは3日後に死んでしまった。22年にはコウコウも急死し、以降、子供を産むことはできなかったが、同園で1頭だけのパンダとして愛され続けてきた。
令和2年7月に中国に返還される予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で日程が決まらないまま、3年3月に心疾患が判明。病状の安定を図るなどの理由で、今年末まで返還期限が延長されていた。
同園によると、昨年の秋から固形のエサは食べなくなり、今年3月からは液体の栄養食も飲まない状態になっていた。一日をほとんど寝て過ごすタンタンを飼育担当が24時間態勢で見守り、検査や投薬に努めてきたという。同31日夜、タンタンが動いていないことに飼育員が気付き、獣医が蘇生(そせい)措置を施したが、息を引き取った。
日によって食べる竹の種類が変わるというグルメな〝お嬢様〟だったタンタン。かつて植木関連の仕事をしており、来園時から竹を提供してきた岩野憲夫さん(76)=神戸市北区=によると、タケノコが伸びた孟宗竹が好きだったといい、「好みが分かるまで時間がかかって大変だった。でもだんだんタンタンのことが分かっていくのがうれしかった」と振り返る。
採った竹を新鮮に保つため竹専用の冷蔵庫も置き、24年間届けてきた岩野さん。「ほぼ四半世紀の付き合いだった。タンタンがかわいかったからできた。ありがとうという思いしかない」
タンタンが過ごしていたパンダ館には今月2日から献花台が設置され、多くの人が訪れている。タンタンの写真が置かれた寝台は来園者が供えた花で囲まれ、タンタンがどれだけ多くの人に愛されていたかを物語っている。
花だけでなく、イラストや写真も供えられ、「パンダ館の外から見守ることができた時間はとってもすてきな時間でした」「今までたくさんの幸せをありがとう」などと心のこもったメッセージも残されている。
大阪府八尾市の井上佳代さんは、タンタンがタイヤに乗って笹を食べている姿や、おにぎりのように見える後ろ姿が大好きだったという。「辛いことがあっても、タンタンを見ていると勇気をもらえる。(死んだことが)信じられず、また元気なタンタンを見たかった」と涙ぐんだ。
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神戸市は5月10日午後2時から同園の動物園ホールで追悼式を開く。メモリアルムービーの上映や献花などが行われる予定で、100人程度の参列者を同園のホームページから4月23日まで募集している。(弓場珠希)
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