文化審議会は19日、浪曲語りの京山幸枝若(こうしわか)さん(70)や、漆芸の装飾技法の一つ、沈金の西勝広さん(69)ら6人を重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定するよう文部科学相に答申した。

  • 浪曲師初の人間国宝、京山幸枝若さん「もう一度、栄えた時代に」
  • 輪島塗職人の西勝広さん「技術を継承し、復興に貢献」

 人間国宝はほかに、常磐津節(ときわずぶし)浄瑠璃の常磐津一佐太夫(かずさだゆう)さん(81)、青磁の神農(しんのう)巌さん(67)、八重山上布(じょうふ)の新垣幸子さん(78)、竹工芸の岐部笙芳(きべ・せいほう)さん(72)。浪花節とも呼ばれる浪曲語り、琉球王朝の時代から続く織物製作技法の八重山上布は、今回初めて重要無形文化財に指定される。この認定で、人間国宝は108人となる。

 また、文化財保存のための選定保存技術の保持者に、屋根瓦製作(琉球瓦)の八幡(はちまん)昇さん(74)、玉鋼(たまはがね)製造(たたら吹き)の堀尾薫さん(55)、研炭(とぎずみ)製造の木戸口武夫さん(64)、漆工品修理の室瀬和美さん(73)と松本達弥さん(62)、美術工芸品保存桐箱(きりばこ)製作の鈴鹿五郎さん(76)を、保存団体に屋根瓦葺(ぶき)(琉球瓦葺)の琉球瓦葺技術保存会(沖縄県)、茅(かや)葺の日本茅葺き文化協会(茨城県)、日本産漆生産・精製の丹波漆(京都府)を認定するよう答申した。

 人間国宝に認定される人は次の通り。(敬称略)(筒井次郎)

 京山 幸枝若(きょうやま・こうしわか=本名・福本一光) 1971年に父の初代幸枝若に入門、2004年に二代目襲名。力強く伸びやかな高音、緩急自在の節と啖呵(たんか)で作品世界を情感豊かに語る。10年から浪曲親友協会会長。23年、芸術選奨文部科学大臣賞。

 西  勝広(にし・かつひろ) 1973年、漆芸家の三谷吾一に師事し、輪島の伝統的な沈金技法を学ぶ。卓越した点彫りの技法で、身近な花を題材とした繊細で立体感豊かな作品を制作する。80年から日本伝統工芸展で受賞を重ねる。2020年、伝統文化ポーラ賞優秀賞。

 常磐津 一佐太夫(ときわず・かずさだゆう=本名・井筒泰弘) 1951年、二世常磐津理喜蔵に師事。77年に現在の芸名を許された。つややかで伸びのある声と幅広い音域を持ち、深みのある情景描写に優れる。上演機会の少ない曲も手がけ、常磐津節の継承にも貢献する。

 神農  巌(しんのう・いわお) 京都の製陶所で修業し、1987年、大津市に工房を構える。泥状の土を筆で塗り重ね、優美な曲線を表す堆磁(ついじ)技法を考案。青磁の表現に新たな可能性を開く。2009年、日本伝統工芸展朝日新聞社賞。15年に日本陶磁協会賞。

 新垣 幸子(あらかき・さちこ) 沖縄の工業試験場で染織技法を習得。1973年、石垣島に工房を構える。琉球王朝時代の八重山上布の復元に取り組み、技法を復活。作品は透明感にあふれ、自由でのびやかな絣(かすり)模様が展開する。99年、伝統文化ポーラ賞。

 岐部 笙芳(きべ・せいほう=本名・岐部正芳) 会社勤務を経て、30代後半に大分県の職業訓練施設で竹工芸を学ぶ。1990年、本田聖流に師事。竹のしなやかさを想起させる、柔らかな曲線を特徴とした作品を制作する。93年から日本伝統工芸展で受賞を重ねる。

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