ユーカリが丘線を走行する1000形=千葉県佐倉市で2024年7月8日、渡部直樹撮影
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 どうして壁のない高架を落ちずに走られるのでしょうか。千葉県佐倉市のニュータウン「ユーカリが丘」の中を走る1000形「こあら号」は、まるで空飛ぶ電車です。

1000形の運転台=千葉県佐倉市で2024年6月10日、渡部直樹撮影
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 平行に並んだ走行路の上を、車と同じようなタイヤで走ります。間には案内用のレールがあり、水平に取り付けられた別のタイヤで左右から挟み込むようにしてなぞっています。中央案内軌条式といい、日本では札幌市営地下鉄とここにしか例がないそうです。どんな経緯で作られたのでしょうか。

 運営するのは住宅開発などを手がけるデベロッパー「山万」です。路線は京成電鉄と接続するユーカリが丘駅を起点に、ラケットのような形で一周およそ14分。タウン内のどの家からも徒歩10分以内で行けるように6駅が設置されていて、1日約3000人の乗客を運んでいます。

1000形の下部。中央下に見えるのが案内輪で、案内軌条を挟みながら走行する。右下に伸びているのがマイナス側の集電器=千葉県佐倉市で2024年6月10日、渡部直樹撮影
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 山万がこのタウンの開発に着手したのは1971年。日根直人常務取締役(当時)が86年に日本宅地開発協会の機関誌へ寄せた記事によると、当初はバスで近隣の京成電鉄の駅との間を結ぶ予定だったそうです。しかし、駅に至る道路や駅前の整備状況が思わしくなく、多額の整備費が必要になることがわかりました。

 そこで「同じ投資をするなら」とほかの交通手段の研究を始めました。同じタイミングで「佐倉市から『志津駅と臼井駅の中間に原因者負担の請願駅を新設したら……』という提案が」あったこともあり、自己負担で新駅を建設して京成電鉄に譲渡し、そこまでの交通手段を作ることになりました。

1000形の車内=千葉県佐倉市で2024年6月10日、渡部直樹撮影
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 76年の事業計画書を見ると「側方誘導方式」「自動運転」を導入すると書かれています。中央ではなく側面で誘導する方式はユーカリが丘線より少し早く開業した大阪市の「ニュートラム」など多くの路線でみられます。しかし、実際にはその後、日本車両製造と三井物産による中央案内方式のシステム「VONA」を採用することになりました。

 80年に当時の取締役電鉄事業部長が日本モノレール協会の機関誌につづった内容によれば「輸送需要に合わせ単純化したシステム構成が可能」というのがその理由でした。VONAも無人自動運転が可能なシステムでしたが、ユーカリが丘線では輸送規模やコスト面からワンマン運転になったようです。

1000形車内に取り付けられた日本車両製造のプレート=千葉県佐倉市で2024年6月10日、渡部直樹撮影
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 冷房も当初全くついていませんでしたが、運転室には機器の故障を防ぐために後から小型のエアコンを取り付けました。構造上、客室まで冷やせる大型の冷房はつけられず、夏は乗客におしぼりやうちわを配るというユニークな方法で暑さに対処しています。

1000形の非常用ボタン。ランプのカバーは美しい多角形になっている=千葉県佐倉市で2024年6月10日、渡部直樹撮影
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 ユーカリが丘線の開業と当時に登場した1000形はすでに40年以上経過し、車両の更新も検討しています。数年前に変電所の設備を更新した際には、冷房付きの車両が走ることを見越したものにしたといい、担当者は「次に車両更新する時には冷房車になる」としています。

 ちなみに6月15日には日本で初めてとなる、顔認証による乗車システムを本格導入しました。「空飛ぶこあら」はどんな未来に向かうのでしょうか。楽しみにしたいと思います。

【写真・文 渡部直樹】

ユーカリが丘線を走行する1000形=千葉県佐倉市で2024年6月10日、渡部直樹撮影
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