慶応大学医学部は医学部定員(1学年110人)に栃木県枠(1人)を設けることを決め25日、県庁で金井隆典・医学部長と福田富一知事が協定書を交わした。同大医学部が地域枠を設けるのは初めて。金井学部長は「栃木県には慶応大学とゆかりの深い病院が多い。多様な人材が大学に集まり、県出身の学生が(大学で)もまれて県に戻り、医療を支えるという循環ができればうれしい」と述べた。
現在の高校2年生が大学を受験する26年度入試から実施する。一般入試を受験し1次試験を突破するのが前提。2次試験の面接を大学が行うほか、県の面接をプラスすることが検討されているという。制度の詳細は、大学と県の間で詰め、来年6月ごろ公表する。
地域枠は県が入学金と授業料を修学資金として貸与する制度で、卒後9年程度、地域医療に従事すると返還が免除される。県は独協医科大学、自治医科大学との間ですでに計16人の地域枠を設けている。
慶応の場合、医学部の定員は増やさず、定員内に栃木県枠を設ける。また、卒業後に大学院進学や海外留学をするケースも少なくないことから、卒後14年の間に9年、県内での医療に従事することを検討している。専攻科などに条件は設けない方向だ。
福田知事は「医師の地域偏在の解消には地域枠をはじめ、修学資金制度を活用して地域医療を担う医師の養成に取り組むことが不可欠。慶応の地域枠の設置により、高度医療人材を確保し地域医療の充実を果たすことができる」と述べた。
県内には済生会宇都宮病院、県がんセンター、足利赤十字病院、佐野厚生総合病院など慶応大学とゆかりの深い病院が多い。昨年8月、慶応大医学部出身の尾沢巌・県立がんセンター理事長と金井学部長が医師の人材確保について話し合う中で、慶応側から地域枠の話が出たという。
大学にとっては、地域枠を用いて多様な学生を確保する狙いがある。同大医学部の学生は内部進学が4割で6割が一般入試で入学するが、全体の7割が首都圏(1都3県)に集中している。経済的な事情から、私学の医学部に行くことをちゅうちょすることも背景にあるとみられる。
金井学長は「骨太な人材を育成するという意味で多様性は大きなキーワード。栃木県が扉を開いてくれたことに感謝する」と述べた。栃木県以外にも広げるのかどうかについては「まず栃木で成功させる。いろんな地域から入学するきっけかにしたい」と話した。【有田浩子】
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