信楽眠子さん(仮名)が書いた色紙。左は夜間中学卒業時、右は高校卒業時のもの

学ぶことで人は変わり、成長する-。4年ぶりに再会した信楽眠子(しがらき・ねこ)さん(30)=仮名=が、改めてそう教えてくれた。

眠子さんは子供時代に壮絶な虐待を受け、学校にも満足に通えなかった。夜間中学を経て定時制高校に進み、今春から大学に通う。社会福祉士などの資格を取り、困っている子供たちを支えたいという。

「夜間中学に入学するまでは流されるままに生きてきましたが、教育を受けて勉強することで自分の意見を持ち、なりたい自分が見えてきました」と話す。

以前は「思う」ことはあっても、「願う」ことはなかった。「思うだけならそこにとどまっていられるけど、願うと叶えないといけない気がするから。学校で成功体験を積んで、願って叶えられる力を少しずつ身につけています。今は『思う』ことより『願う』ことが増えました」。ほほ笑みながら話す眠子さんの姿に胸が熱くなった。

夜間中学を卒業するときに取材した際は、記者が質問すると長い沈黙があった。「あの頃は伝えたいことがぼんやりとしていて、知っている言葉も少ないので、どう言えばいいのか考えて話すのに時間がかかりました」と振り返る。今、打てば響くように自分の言葉を紡ぎ出す。「高校で深く学び、知識量が格段に増えました。それにつれて自分の意思が強くなり、言いたいことがはっきりするようになりました。知識があれば伝える言葉が生まれる」

眠子さんの姿は、学びとは何かを体現していた。(伐栗恵子)

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