お盆、お彼岸にはお墓参りをする人も多い。お墓といえば縦長の四角い墓石の「和型」が一般的だが、オリジナルデザインのお墓にこだわる人もいる。
少子化と過疎化により墓石を撤去する「墓じまい」が増える中、工夫を凝らしたお墓を建てる人々にはそれぞれの思いと理由がある。
弁護士バッジ、アメ車のお墓も
「自らが生み出した『書』を墓石として残してほしい」
今年度の「第30回想(おも)いを込めたお墓づくりコンテスト」で「大賞」を受賞したのは、書家だった父の生前の意向を尊重して墓石にその書を刻み、筆もかたどった墓だった。娘は「父もさぞかし喜んでいると思います」とコメントを寄せた。
コンテストは、全国約200社の石材店で組織する一般社団法人「全国優良石材店の会(全優石)」が開いた。会長の吉田岳さん(57)は「一般の人が得られるお墓の情報は限られているため、お墓の形には決まりがなく、故人や家族への思いを反映させたお墓づくりがあることを知ってほしかった」と趣旨を説明する。
ヒマワリとてんびんがモチーフの弁護士バッジ形のお墓は「特別賞」に選ばれた。結婚後に司法試験を目指すことを後押しし、合格後は仕事を支えてくれた夫への愛と感謝を込めて、弁護士である妻が建立した。
亡き夫の愛車のアメ車(米国製乗用車)をかたどったお墓は「入賞」した。車の運転席と助手席まで丁寧に再現されていた。
どんな人がオリジナルデザインのお墓を建てるのだろうか。吉田さんは「30年ほど前からオリジナルデザインのお墓を建てる人が増えました。それまではお墓は『先祖の供養塔』と考えるのが一般的で画一的な形でしたが、最近では価値観が多様化し、一緒に暮らしている家族との『あの世の住まい』と考え、自分たちらしさをデザインに取り入れる方が増えているようです」。
気になるお値段は……
デザインの流行は「ない」というが、「強いて挙げるなら強化ガラスを使ったお墓」と吉田さん。昨年のコンテストでは、ガラスで表現した青色の富士山と黄色の月が印象的なお墓や、透明な大きなガラスに藤の花を彫刻したお墓が入賞した。
自由な発想で建てられるオリジナルデザインのお墓。気になるのがその値段だ。
全優石が2023年3~5月に加盟店でお墓を購入した人を対象に実施したウェブアンケート(有効回答数1061人)によると、墓地取得費用を除いた墓石の購入金額は、全国平均170万7000円。墓石タイプ別の平均単価で最も高いのは、「デザインのお墓」(製品化されたデザイン墓も含む)で189万6000円。次いで「伝統的な和型」が189万2000円、横長の「シンプルな洋型」が158万1000円だった。
吉田さんは「オリジナルデザインのお墓も他のお墓と石の量は大きく変わりません。かかるのは加工費や人件費ですが、通常の倍まではかからないことが多いです」と話している。【御園生枝里】
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