不登校をめぐる松本さん(前列左から2人目)らの対談に聴き入る参加者=東近江市躰光寺町で2024年8月18日午後1時11分、伊藤信司撮影

 不登校生の母親らが体験を語り合う会が18日、滋賀県東近江市の能登川コミュニティセンターであった。県内外からオンラインも含めて約50人が参加。新学期のスタートを前に、学校復帰や進学などに向けて少しずつ歩んでいこうと、お互いを励まし合った。

 地元で不登校生の作品展を催したり、母親同士の交流カフェを開いたりしている松本喜美さん(50)が企画した。松本さんも不登校中の長男(中2)を持ち、その作文を今春絵本化して自費出版した。SNS(ネット交流サービス)でも発信しており、この日は奈良県、静岡県、神戸市から松本さんの母親仲間が駆けつけ、ハンドルネームで対談に臨んだ。参加者は対談を傍聴した後、体験を語り合った。

 対談では、ひでみん(47)が新型コロナウイルス禍を機に長女(小6)と次女(小2)が不登校になったと話した。長女は校門の前で足が止まって顔が青ざめるように。次女も連鎖して休むと言い出し、自身は20年勤めた会社を辞めることになった。世間から取り残されるような不安に襲われたが、夫から「子育ても大事な社会貢献」と言われ納得できた。昨年、夜中に長女から「家族に迷惑掛けて罪悪感がある」と打ち明けられた。今春からは長女と「母子登校」に取り組み、授業中は校内で待機している。次女は放課後の学校に通い、野菜の水やりなどを始めている。

 すみちゃん(47)は長女(高1)が小5に進級する前夜、過呼吸発作を起こし、休みがちになったと振り返った。中学になると集団に入れず、商店のレジにも並べなくなり、部屋に引きこもった。娘とゆっくり向き合うため、銀行の正社員を辞めた。「けさも顔が見られてうれしい」「生まれてきてくれてありがとう」と声を掛け、彼女がイラストに熱中している様子に気づいた。芸術コースへの進学を応援することになり、複数の私立高に挑戦。今年2月に合格を勝ち取った。今はアルバイトなども含め、高校生活をエンジョイしている。

 参加者からはさまざまな体験が語られた。発達障害の傾向があったが普通学級に通い続けたところ、小6から不登校になった▽部屋でオンラインゲームにのめり込み数十万円の請求が来た▽中学に行き渋った後、通信制高校に進んだ子供の自己選択を誇りに思う――など。参加者は車座になり、熱心に耳を傾けていた。

 松本さんは現在、長男をフリースクールに通わせる一方、ケアマネジャーとしての仕事も続けている。「(母親として)周りから怒られたりへこんだりする毎日ですが、私も自分らしく生きていきたい。閉鎖的な子育てではなく、みんなでつまずきを照らし合わせていきましょう」と呼びかけた。交流活動への参加、問い合わせはインスタグラムで。【伊藤信司】

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