東山動植物園(名古屋市)は23日から、「現代の恐竜」とも称される「コモドオオトカゲ」の展示を始める。世界最大のトカゲであるコモドオオトカゲの野生での生息数は約3500頭。絶滅危惧種にも指定されており、希少性が高い。日本で唯一となる飼育展示が実現した背景には、名古屋市の6年にわたる誘致活動があった。

22日に報道陣に公開されたコモドオオトカゲ「タロウ」は、足を一歩一歩踏みだし、どっしりとした動きで現れた。全長約2.7メートル、体重は現在約50キログラムで13歳のオス。大きな体でゆっくりと辺りを見回し、エサ用のネズミを大きな口で丸のみすると、満足げな表情で舌なめずりした。

コモドオオトカゲはインドネシアのコモド島などに生息する。猛毒を持つ世界最大のトカゲで、全長は最大で3メートルを超える。その迫力から「コモドドラゴン」とも呼ばれ、ときに「現代の恐竜」と評される。中日ドラゴンズが本拠地を置く名古屋との縁を感じる別名だ。

23日からの展示を前にして来園者の注目が高まっている(22日、名古屋市)

名古屋市は2018年に河村たかし市長がインドネシアの動物園「タマン・サファリ・インドネシア」を訪問したことをきっかけに、誘致に動いた。成就するまで6年を要したのは、当初予定していたインドネシアからの誘致が難航した経緯がある。

コモドオオトカゲは唯一の生息地であるインドネシアでの野生の生息数が3500頭程度と希少性が高い。インドネシアとの交渉は「一定の水準以上の飼育施設の整備」や「インドネシア政府からの許可」といった条件が求められたという。

今回の誘致は当初想定していたインドネシアからではなく「シンガポールルート」だ。転機は21年の春、上野動物園(東京・台東)からの連絡だった。

タロウはシンガポール動物園で生まれたが、名前の通り日本との縁が深い。タロウの母親は日本の上野動物園で飼育されていたコモドオオトカゲだ。

繁殖のためのスペースを確保したいシンガポール動物園から、所有権を持つ上野動物園にタロウを引き受けてほしいと依頼があったという。上野動物園でコモドオオトカゲを飼育していたのは08年まで。現在は飼育できるスペースが用意できないことから、受け入れの意思を公言していた東山動植物園に打診したという。

東山動植物園は上野動物園からの連絡を受け、急きょ旧ゴリラ舎を整備してタロウを迎える体制を整えた。今後はインドネシアから誘致できるように交渉を続けるほか、27年度の完成に向けて飼育施設の整備を続ける方針だ。タロウの飼育を担当する湯川正幸さんは「いずれメスを迎えて繁殖を目指したい」と語った。

東山動植物園の22年度入場者数は230万人を超え、日本動物園水族館協会によると、動物園としては上野動物園に次いで国内で2番目に多いという。東山動物園の永田祐二園長補佐は「飼育種が日本で一番多く、絶滅危惧種も130種ほどいることが強みだ」と説明する。

コモドオオトカゲを現在飼育する動物園は国内に無く、東山動植物園が唯一の飼育展示場所となる。永田園長補佐は「タロウの誘致で入場者増につながると思う」と期待を込める。

タロウの飼育施設には「コモドオオトカゲの今」と題された看板が飾られている。獲物となる野生生物の乱獲などによって生息数が減少し、絶滅の危機にあることや「インドネシアの国宝」としてインドネシア政府が保全活動を行っていることが紹介されている。

観光資源が少ない名古屋にとって、こうした希少動物と一堂に会する東山動植物園は貴重な施設だ。飼育に必要な環境を、行政や運営側、来園者が一体となって守っていくことが欠かせない。

(山名直花、竜田菜美子)

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