子どもだけでなく大人も…
風邪と勘違い?「歩く肺炎」のゆえんは
マイコプラズマ肺炎って?
8年ぶりの感染拡大 なぜ?
診察前に“せきの様子、動画に撮って”
クリニックを取材していると、別の方からも話を聞くことができました。
小学6年生の娘がかかった30代の母親「熱が40度近く出て、せきも心配です。小学4年生の息子も症状が出始めたのでクリニックに連れてきました。私自身も数日仕事を休むことになりました。もう少しで夏休みも終わるので早くよくなってほしい」
さらに、家族の中で感染が広がっているケースもありました。自営業の40代の女性は先月、小学3年生と中学1年生の息子2人、そして本人がマイコプラズマ肺炎となりました。この日は、子どもの新学期が始まる前に登校許可証を医師に書いてもらうために来院していました。
家族3人が感染した女性「最初に次男が感染し、その後、長男と私も感染し、家庭みんながつらい思いをした。次男の症状が最もひどく、嘔吐と、せきや熱が続き、夜も寝られずごはんも全く食べられないほどだった。私は感染から1か月以上たつが、胸のあたりが苦しいせきがずっと続いていて、普通の風邪とは違うと感じている」
このクリニックでは、7月は1週間あたりの患者数が3人から6人でしたが、今月は15人から18人と、3倍以上に増加しています。院長によりますと、マイコプラズマ肺炎は発熱と、乾いたせきが長く続くことが特徴で、感染から発症までの潜伏期間が2週間から3週間と比較的長く、いつ感染したかわかりづらいほか、症状が出ても風邪だと思って出歩く患者も多いため、「歩く肺炎」とも呼ばれています。
マイコプラズマ肺炎とは?「肺炎マイコプラズマ」という細菌に感染して起こる呼吸器の感染症です。どんな人がかかりやすい?患者は子どもが多く、厚生労働省によりますと、例年、報告される患者のおよそ80%は14歳以下だということです。症状は?症状は発熱や全身のけん怠感、頭痛、せき、皮膚の発疹などで中でもせきは熱が下がったあとも数週間続くのが特徴です。感染経路は?感染経路は飛まつ感染と接触感染が中心で、学校や保育園、幼稚園など集団で過ごす場面で流行しやすいとされています。治療は?専門家によりますと、感染しても軽症の場合は自然に回復するのを待ちますが、抗菌薬による治療を行うこともあります。悪化するケースもある?およそ10%のケースで肺炎を起こし、重症化すると入院が必要なことがあるほか、心筋炎や脳炎などの合併症が起きることもあるということです。
国立感染症研究所のまとめによりますと、ことしはマイコプラズマ肺炎の患者の報告が急増していて、8月11日までの1週間に全国500か所の医療機関から報告された患者の数は1医療機関あたり1.14人となり、大流行となった2016年以来、初めて「1人」を超えました。
都道府県別でみますと、多い順に
▼大阪府で3.72人▼福井県で3.5人▼岐阜県が3.2人▼東京都では2.12人▼愛知県では2.07人
などとなっています。このことについて、日本マイコプラズマ学会の理事で杏林大学の皿谷健教授に話を聞きました。
ーなぜ感染が急拡大している?「新型コロナウイルスの感染対策が緩和されたことで人々の行動が変わり、人と人との接触が増えたことが要因ではないか。新型コロナの流行が始まってから、日本でも世界でもマイコプラズマ肺炎は激減していて、当院でもここ3年ほどは一例も見られなかったが、ことし6月くらいから一気に増えた印象だ」ー治療の注意点は?「従来の抗菌薬を投与して2日から3日以内に解熱しない場合は、薬が効きにくい耐性菌を疑ってほかの薬を投与するが、子どもの場合は副作用の懸念からほかの薬を使いにくい。薬の選択肢が狭まってしまうので、耐性菌の割合が増えないか注視する必要がある」―感染対策は?「マスクの着用や手洗いといった基本的な感染対策が重要だ。感染した当初は一般のかぜと区別しにくく、重症化する原因もはっきり分かっていない。熱の症状やせきが続くときは学校や仕事を休んで、医療機関を受診して必要な処置を受けてほしい。特に、ぐったりしていたり、呼吸が荒かったりしたときには注意が必要だ」ー今後の見通しは?「マイコプラズマ肺炎は学校などの集団生活の中で広がりやすいので、夏休みが終わって集団生活が始まったら症状のある子どもがいないか、特に注意してほしい。いまは子どもの感染が目立つが、家庭内感染などで今後は大人の感染者も増えてくると考えられる」
家族の中で感染が広がるケースも相次いでいる「マイコプラズマ肺炎」。冒頭で紹介したクリニックでは、患者に対し抗菌薬や解熱剤などを処方していますが、通常の抗菌薬が効きづらい「耐性菌」が検出されるケースも増えているといいます。耐性菌が広がると、症状が長引いたり、適切な抗菌薬が投与されなければ感染が拡大したりすることが懸念されるということです。感染対策としては手洗いや換気などが基本となりますが、熱やせきの症状が出始めた場合はマスクを着用するほか、かかりつけ医などに相談してほしいとしています。
「クリニックばんびぃに」時田章史院長「夏休みが明けて集団生活が始まると感染の拡大が懸念される。運動会や文化祭、受験のシーズンを迎え、せきが長引いたり重症化したりすると、子どももつらい思いをすることになってしまうので、早めの診断と治療が重要だ。心配なせきが出ているときには、その様子の動画を撮影し、診察の時に医師に見せると診断がスムーズになる」
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