看板メニューの万葉の歌クリームソーダ(右)と季節のスイーツプレート。8月販売のもの=「HUMANITIES CAFE fudoki」提供

 JR大宮駅東口から徒歩3分の繁華街に店を構える。カフェを経営しているのは、日本古代史を専門とする研究者の吉原啓さん(41)。店名の「HUMANITIES」は人文学の意味で、歴史学や哲学など、人間とその文化を総合的に探究する学問の総称を指す。「fudoki」は、奈良時代に編さんされた地誌「風土記」から取った。

 専門的な印象を与える店名から一見「敷居が高いのでは?」と思わされるが、店内は白を基調としたインテリアで清潔感があり、誰でも訪れやすい雰囲気だ。客層の8割は女性だという。

 看板メニューは、万葉集を題材とした「万葉の歌クリームソーダ」。月ごとに題材となる歌と味付けが変わり、8月の歌は柿本人麻呂が詠んだ「淡海の海夕波千鳥汝(な)が鳴けば情(こころ)もしのに古(いにしえ)思ほゆ」。「夕方に琵琶湖で鳴く千鳥の声を聞くと、昔のことを思い出して、心がしおれるようだ」との内容が歌われている。だいだい色のマンゴーのシロップで夕方を表現し、鳥をかたどったクッキーやマンゴーの果肉などをトッピングした。

 テイクアウト用の「埼玉考古クッキー」は、県内で出土した土偶や埴輪(はにわ)などをかたどったもので、平安時代に武蔵国で食べられていたと伝わる「菱(ひし)の実」の粉を使っている。食事メニューも多数そろえており、特に「エッグベネディクト」や「短角牛のローストビーフごはん」が人気だ。

吉原啓店長=2024年8月21日、加藤佑輔撮影

 店長の吉原さんは、奈良大大学院を修了後、栃木県那須地域の古代史に興味を持ち、同県大田原市の歴史民俗資料館で学芸員として勤務。その後、勤めた奈良県立万葉文化館では、万葉集を研究資料とした古代史に関する論文を多数執筆した。

 「博物館は訪れる人が限られてしまうが、気軽に来られるカフェなら多くの人に古代史に触れてもらえるのでは」と考え、2023年7月にカフェをオープン。自身の経歴を生かし、毎月クリームソーダの題材にした万葉集の歌を解説する講座を店内で開いている。店の外壁では、古代史をテーマにしたパネル展示も行っている。

 吉原さんは「古代史に興味がある方もそうでない方も楽しめるカフェなので、ご来店をお待ちしています」と話している。【加藤佑輔】

HUMANITIES CAFE fudoki

 さいたま市大宮区大門町1丁目63 栗橋ビル1階。営業時間は午前11時半~午後9時。水、木曜定休。048・729・6088。

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