政府は2日、1月に施行された認知症基本法に基づく「認知症施策推進基本計画」案を関係者会議で示し、大筋で了承された。会議には認知症の人も委員として加わって意見を述べ、基本計画案では認知症とともに希望を持って生きるという「新しい認知症観」が打ち出されたほか、さまざまな施策を認知症の本人の視点に立って進める姿勢が明確にされた。
基本計画は、認知症施策推進大綱(2019年策定)に代わる位置付け。認知症について「痴呆症」と呼ばれるなど偏見のあった過去の価値観に言及。「社会的に孤立する」「意思が十分に尊重されない」など今に続く課題を指摘したうえで、新しい認知症観という考え方を広めることを掲げた。
厚生労働省の推計によると、高齢者のうち認知症の人は22年で443万人に上り、軽度認知障害も含めると1000万人を超える。こうした点を踏まえ、誰もが認知症になりうる時代であり、自分のこととして理解を深めることの重要性を指摘した。
また、共生と予防を両輪とした大綱に比べ、基本計画案は共生社会の実現により重点を置く形となった。
基本的施策として、若年性認知症の人の就労支援強化など「社会参加の機会確保」▽地域の企業や公共交通機関なども加わった「生活におけるバリアフリー化の推進」――など12項目を盛り込んだ。
目指す社会像を示した重点目標として、国民が新しい認知症観を理解していること▽認知症の人の生活において意思等が尊重されていること▽認知症の人や家族が他の人々と支え合いながら地域で安心して暮らせること▽新たな知見や技術を活用すること――の4項目を挙げた。
目標達成度合いを測る「指標」も定め、認知症サポーターの養成者数や、本人ら当事者が互いに支え合う「ピアサポート」活動を支援している自治体数、製品・サービスの開発に当事者が参画した数などを挙げた。
都道府県や市町村は、国の基本計画をもとに、地域の実情に沿った計画を策定することが努力義務とされている。当事者らが施策の立案や推進などに参画する際に、丁寧な情報提供や説明などの配慮を求めた。
計画は期間が29年度までで、おおむね5年ごとに見直す。今秋に閣議決定する。【阿部絢美】
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