群生するクマガイソウ。袋状の花弁が特徴だ=大阪府豊能町

絶滅危惧種の山野草、クマガイソウが大阪府豊能町の初谷渓谷で群生している。同町で自然保護活動を行う向井勝さん(81)や小嶋正良さん(77)らが管理や保護を手がけ、今年も無事に開花した。クマガイソウの群生地は全国でも珍しく、今が見頃になっている。

クマガイソウはラン科の多年草。杉林に群生し、一定方向に花が整列する光景は圧巻だ。特徴は袋状の花弁。平家物語の登場人物、熊谷直実(くまがいなおざね)が矢から身を守るために背負った「母衣(ほろ)」に似ていることから、名付けられたとされる。

環境省の絶滅危惧種に指定され、府内では自然種は絶滅したと思われていた。だが、平成29年に発見され、報告を受けた大阪市立自然史博物館が現場で確認した。

クマガイソウの成長を見守る向井勝さん(左)と小嶋正良さん

貴重な株を保存する必要性から、発見者と親交があった同町の向井さんや小嶋さんが30年、土地の所有者の許可を得て自生地と環境が似る初谷へ一部を移植。毎日のように通って観察し、野生動物などから守るために周囲に金網なども整備し、成長を見守ってきたという。

移植場所は妙見山の登山道近くにあり、以前から向井さんらが「初谷渓谷憩いの場」として整備してきた。

移植株は順調に育ち、今年は過去最多の200株以上が咲いた。小嶋さんは「初めて花を見て感嘆の声を上げる人もいる。年々豪華になっているがもっと増やしたい」と語る。

昨年は500人ほどが訪れ、東京からわざわざやって来た人もいた。

地元住民に誘われて大阪市内から訪れた女性らは「やっと見られた。こんなに咲いていてすごい」「見れば見るほど不思議な花」と撮影を楽しんでいた。

向井さんは「クマガイソウ、キツネノカミソリ、チョウのオオムラサキを重点動植物として地域観光の目玉にしたい」と期待を込めた。

大型連休中は楽しめる見込み。能勢電鉄妙見口駅から徒歩約40分(山道あり)。問い合わせは小嶋さん(080・6228・1947)。

(北村博子)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。