北陸新幹線の敦賀延伸から16日で半年を迎えた。来県者数は2割以上増え、好調を維持しているが、開業効果に濃淡が見られるなど課題も抱える。

 「現状は非常に順調に、期待通り推移している。夏休みの人出も本当に多かった」

 福井県の杉本達治知事は、開業半年を前にした6日の記者会見で、こう手応えを語った。

 KDDIの保有するビッグデータによる県の推計で、開業から5カ月間の全国からの来県者は、前年同期比で23%増えた。とりわけ、関東圏と信越地域(新潟・長野)は大きな伸びを見せた。

 夏休み期間(7月20日~8月31日)の観光施設の入り込み数も好調で、県立恐竜博物館(勝山市)は前年同期比5・4%増の約29万9千人。一乗谷朝倉氏遺跡博物館(福井市)は26・7%増の約3万3千人。敦賀赤レンガ倉庫(敦賀市)は41・6%増の約2万1千人だった。

 JR西日本金沢支社によると、お盆期間(8月9~18日)の北陸新幹線の利用状況は、乗客数が最も多い区間の上越妙高―糸魚川間(いずれも新潟県)で約39万7千人。前年同期比で26%増えた。期間中の1日あたり平均乗客数は約4万人で、ゴールデンウィークや年末年始を含む客の多い時期で過去最高となった。金沢―福井間の利用客は、前年同期の在来線特急の運行時と比べ、36%増の29万1千人に上った。

 終着駅の敦賀駅も好調だ。敦賀市は、北陸新幹線開業から5カ月(3月16日~8月15日)の市内の主な観光施設の来訪者数を発表。主要7施設の利用状況は、前年同期比1・5倍の約45万人が来場した。市は「堅調に推移している。短期的ではあるが開業効果が続いている」とみている。

 伸び率が大幅に増えたのは、敦賀鉄道資料館(旧敦賀港駅舎)で、前年同期比約2倍の2万3千人。敦賀駅隣接の公設民営書店「ちえなみき」は同1・7倍の約20万6千人に達した。

 敦賀駅を降りた後の「2次交通」の利用も順調だという。駅を起点に気比神宮や金ケ崎緑地、日本海さかな街などを巡る周遊バスは、同約2倍の約3万5千人、シェアサイクルも約7600人が利用した。

 県観光連盟の観光客アンケートの回答を分析すると、東京からの来県者の世帯収入は1000万以上1200万円未満と1500万円以上が多い傾向がわかった。県は宿泊施設のリニューアルを後押しするなど、そうした富裕層の観光消費拡大をねらう。

恩恵受けられない地域も

 ただ、課題もある。福井駅や敦賀駅の新しい商業施設が活況を呈する一方、恩恵が受けられない地域をどうするかだ。杉本知事は会見で「人の移動によって空白地域が生まれている」として、開業後に売り上げと人の流れが減った商店街への支援を打ち出した。

 福井市は旅行客向けに、福井駅から離れた中央卸売市場内の食堂や海産物などの販売店、JAの農産物直売所を回る無料バスの実証運行を今月から始めた。

 嶺南全体への波及効果もあまり見られず、小浜市の杉本和範市長は会見で、「敦賀に来た観光客が嶺南全体まで足をのばすところまではまだいっていない」と指摘した。

 インバウンド(訪日外国人客)の誘致策も道半ばだ。23年の外国人延べ宿泊者数は、全国ワースト2位の6万4900人(観光庁調べ)。石川県(約103万人)の約6%だ。開業後の5月は全国41位まで上向いたが、年間40万人の目標にはほど遠い。

 県は13日、JR西日本グループとインバウンド誘客の推進に関する協定を締結。来年4月開幕の大阪・関西万博の会場と県を含む地域を周遊できるお得な切符などを販売する計画だ。(永井啓子、佐藤常敬)

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