世界遺産「宗像・沖ノ島」(福岡県)について最新の調査・研究を紹介する紀要「沖ノ島研究」が第10号を迎えた。2015年の発刊以来、地元研究者らの発表の場になっており、玄界灘に浮かぶ「聖なる島」の全容解明にひと役買っている。

 沖ノ島は千数百年もの間、神秘に閉ざされてきた神の島。航海の安全を祈る遺跡が良好な形で保存され、ゆかりの深い神社や古代祭祀(さいし)を支えた豪族の古墳群とともに17年、「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」としてユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産に登録された。

 いまも地元で続く自発的な調査研究の蓄積を残したいと、同遺産群の保存活用協議会は年1冊のペースで「沖ノ島研究」を刊行し、最新成果を掲載してきた。これまで収録した論考や調査報告は60を超え、今号でも遺跡出土の武器や鏡、奈良三彩などの再検討がなされている。

 協議会事務局の福岡県九州国立博物館・世界遺産室は「世界遺産になっても沖ノ島の謎は広く深い。今後も新たな価値を掘り起こして伝えていきたい」としている。(編集委員・中村俊介)

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