ヒトのiPS細胞から作った心筋細胞を、心筋梗塞(こうそく)を発症したサルの心臓に移植し、心機能を回復させることに成功したと、信州大などのチームが26日、発表した。心臓の細胞は再生しないため、重症であれば現状では心臓移植しか手段がない。チームは治療に道を開く成果だとしている。
チームは、ヒトiPS細胞から作った心筋細胞約6000万個を、1000個ずつ球状にして、人為的に心筋梗塞を発症させたカニクイザル5匹の心臓にそれぞれ移植。生理食塩水だけを心臓に投与した5匹と比較した。拒絶反応を防ぐため、免疫抑制剤を使った。
12週間後に心機能を調べたところ、心筋細胞を投与したグループの方が収縮機能が有意に高かった。移植したほとんどの心筋細胞は成熟し、サル由来の微小な血管が入り込んでいた。
過去の研究では、不整脈を発症することが課題だった。しかし今回は心室に特化した心筋細胞に分化させ、99%以上の純度にしたことなどから、不整脈はほとんど見られなかったという。
チームはバイオベンチャー「ハートシード」(東京)で、虚血性心筋症の患者にヒト由来のiPS細胞から作った心筋細胞を移植する臨床研究を2022年に始めている。24年には信州大でも始める予定だ。
今回の研究では、東京で作製した心筋細胞を約4時間かけて信州大に運んでおり、チームは「将来的に遠方の病院で治療できることも検証できた」としている。
成果は、米心臓協会誌に掲載された。【渡辺諒】
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