SNSなどを通じて交流が始まったきょうだいや親族とみられる犬。左からアズ、海、アポロ、伝翼、ごいち=松山市で2024年4月20日午後2時48分、広瀬晃子撮影
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 ハスキー犬のようなグレーの背中に白いおなか、ふさふさのしっぽ――。そんな共通した特徴があり、見分けがつかない犬6匹が20日、松山市の公園に集結していた。6匹は1匹の野良犬から生まれたきょうだいやその親族にあたる犬とみられる。それぞれ動物保護団体などに保護され、今は別々の飼い主の元で愛情を注がれ暮らしている。SNS(ネット交流サービス)などでつながった飼い主が交流会を開催し、初めて6匹を「再会」させた。

 きょうだいの1匹「伝翼(でんすけ)」(雄、4歳)の飼い主で、松山市の会社役員、佐藤博行さん(59)は2020年6月、保護犬の里親探しに協力していた市内のホームセンターで伝翼を目にし、「少しでも助けになれば」と飼うことにした。店舗からは一緒に生まれたきょうだいが他に5匹いたが、愛媛県内のホームセンターの別店舗で引き取られ、離れ離れになっていると聞いた。

 「きょうだいに会わせてあげたい。伝翼も会いたいはず」。佐藤さんがインスタグラムで他の飼い主を探し始めたところ、ペットショップ店員の情報提供がきっかけで「アポロ」(雄、4歳)の飼い主、大橋祐子さん(46)=松山市=とつながった。同年9月、2匹を会わせると「うり二つ」で、大橋さんと思わず顔を見合わせた。

 2人は「きょうだいじゃないか?会」というグループを作り、その後もインスタで情報収集を続けたところ、「(保護犬だった)うちの子もそっくり」などと情報が寄せられ、その輪は6匹の飼い主に広がった。

6匹のうちの1匹「丸」(雄、3歳)。4月20日の交流会には遅れて参加したため集合写真の撮影には間に合わなかった=藤原美香さん提供
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 店舗などへの聞き取りからきょうだいと確定できるのは伝翼とアポロだけだ。ただ、6匹とも足の指から離れた場所にある爪「狼爪(ろうそう)」が2本ある特徴が共通しており、位置や形も似ている。伝翼らとは年齢の異なる3歳や1歳の犬もいるため、同じ母犬か父犬、おじやおばにあたる犬などの子の可能性もある。

 6匹が初めて一堂に会した4月20日。6匹は警戒してほえることなく、体の匂いを嗅ぎ合うと、すぐにじゃれ合ったり芝生の上を走り回ったりして「再会」を喜んでいるようだった。

「死んでしまう」と飼う決心

藤森照子さん宅に来たばかりの海。愛媛県動物愛護センターでは皮膚がボロボロの状態で震えていたという=松山市で2020年8月(藤森さん提供)
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 伝翼の母犬と6匹はもともと野良犬で、愛媛県西条市の動物保護団体「犬猫ライフ西条」などの協力により同市付近で保護されてきた。このうちの1匹、海(かい)(雄、4歳)は県動物愛護センターに収容されているところを藤森照子さん(55)=同市=一家が引き取った。藤森さんはオリの片隅で震えている皮膚がボロボロの海を見て「このままでは治療されずに死んでしまう」と飼う決心をしたという。

 海は藤森さん一家に大事に育てられ、家族と遊ぶのが大好きな甘えん坊になった。24年3月に散歩中に「きょうだいじゃないか?会」のメンバーに「うちの犬とそっくりですね」と声を掛けられて、交流会に参加することになった。藤森さんは「体の模様などが皆同じでびっくりした。海は他の子たちに会えてうれしそうだった。他の子たちも幸せそうでよかった」と目を細めた。

 佐藤さんは「伝翼やアポロと一緒に生まれたきょうだいや親族は他にもどこかで暮らしているかもしれない。飼い主の輪をさらに広げていきたい」と話す。グループは今後も定期的に交流会を開く予定だ。【広瀬晃子】

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