竹あかりの光が浮かぶ展示室。収蔵品の「謎の置物」も展示に活用=三重県名張市の赤目滝水族館で2024年10月17日午後4時55分、久木田照子撮影
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 森と渓流の空間でちょっと怖い体験を――。三重県名張市の景勝地・赤目四十八滝渓谷で、ハロウィーン気分を楽しむイベントが開かれている。10月末にかけて、入山口周辺の施設や店で仮装した子どもに菓子がプレゼントされたり、仮装コンテストが開かれたり。赤目滝水族館では、研究用の標本や剥製を使った“怖い展示”を企画した。滝周辺の一帯でこうした催しが繰り広げられるのは初めてで、関係者は「ぞくぞくする体験で楽しんでもらえたら」と話す。【久木田照子】

 発案したのは、赤目滝水族館の朝田光祐館長(23)。2013年から約6年間のニュージーランドへの留学中、ハロウィーン行事を体験した。仮装した子どもが「トリック・オア・トリート(お菓子をくれなきゃいたずらするぞ)」と家々を訪ねては菓子をもらい、迎える大人も楽しむ街の文化に触れた。

 水族館を含む滝の運営・管理NPO法人「赤目四十八滝渓谷保勝会」の若いスタッフらが、朝田館長の提案に賛同し、10月末のハロウィーンに向けた企画を準備した。日本では「渋谷などの都会に仮装した若者が集まって騒ぐ」とのイメージがあるが、赤目では「ハロウィーンには自然の空間に行く、という新しい価値観を作ろう」と張り切っている。

 水族館のハロウィーン展示は2階で開かれている。少し壊れた竹あかり(竹灯籠(とうろう))が置かれた古びた階段を昇ると、赤目渓谷の象徴の両生類・オオサンショウウオの標本が暗がりに並ぶ。上の棚から見学者を見下ろすムササビの剥製は、腕を広げてつかみかかってくるよう。普段は地味な存在の収蔵品の数々が、怖い雰囲気を醸し出す。

 目指したのは「怖くて面白い」を入り口に学ぶ展示。標本は、軟骨や筋肉などを可視化する。1階展示室の両生類のえさとなるコオロギの水槽では、中に置かれた流木の無数の穴に半身を潜らせてくつろぐ“コオロギのマンション”を観察できる。朝田館長は「怖い、気持ち悪いと言われがちな生態などを逆手にとった。ぎょっとした後、解説パネルも読んでほしい」と話す。

 1階では「元からハロウィーンをイメージさせる色」「暗い水槽で目が光る」といった生物たちが来館者を迎える。

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