名古屋市立保育園で働く非正規職員約1200人が、今年度末で雇用期限を迎える。任用期間は原則1年だが、再任用可能な回数が市が定める上限の4回に達したためだ。不安定雇用の解消や人材流出を防ぐため、全国の自治体ではこうした上限回数を撤廃する動きも出てきているが、名古屋市は撤廃には至っていない。当事者たちは「次期市長には不適切な運用を見直してほしい」としている。
市によると、市立保育園では現在、約1800人が非正規職員(会計年度任用職員)として働いている。雇用期間は原則1年だが、作文や面接などの公募試験で採用された後、勤務実績に応じて4回までは再度の公募を受けることなく働き続けることができる。
会計年度任用職員の制度は2020年度にスタートしており、今年度で4回の更新を経て「5年目公募」の対象となる市立保育園職員は約1200人に上る。
非正規公務員に対するこうした更新回数の上限は、もともと人事院が国の機関で働く非正規職員に対して設定し、地方自治体で働く会計年度任用職員については総務省が運用マニュアルで同様の上限を記載して各自治体が参考にしていた。しかし人事院は今年6月、「優秀な人材の流出につながる」として上限回数を撤廃している。
人事院によると、これまでの回数規定は「平等取り扱いの原則」の考えのもとにあったが、昨夏以降に各省庁にヒアリングなどしたところ、上限回数が「任期」としてとらえられ、優秀な人材が上限を区切りに流出してしまっていることなどが分かったという。
人事院の決定に合わせ、総務省も運用マニュアルから上限回数の表記を削除し、各自治体に通知した。東京都や北海道などの一部自治体で上限を撤廃する動きが出てきているが、名古屋市はすでに来年度採用の公募を始めており、今後の対応については「検討している」としている。
こうした状況を受け、愛知県労働組合総連合(愛労連)などが組織する実行委員会が12日に名古屋市内で記者会見し、市立保育園で30年以上の勤務経験がある保育補助員の尾崎よしみさん(69)は「まじめに働き続けてきた人たちが物のようにポイ捨てされてしまうことは納得いかない。若い職員たちには、こんな思いはしてほしくない」などと訴えた。
東海労働弁護団事務局長の田巻紘子弁護士はビデオメッセージを寄せ、「実績は十分で働きぶりも評価を得ている方々を、5年たったから放り出すというのはあまりに非道。会計年度任用職員だからという形式的な理由で雇い止めを強行することは、極めて無責任な対応と言わざるを得ない」と指摘した。【加藤沙波】
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