映画「亡国のイージス」の記者会見で(左から2人目)=2004年8月31日、東京都千代田区


2004年9月24日付の産経新聞に掲載した連載「話の肖像画」のアーカイブ記事です。肩書、年齢、名称などは掲載当時のまま。

《ハリウッド、中国と海外映画出演の経験を糧に、次に挑戦するのは日本映画、「亡国のイージス」(来夏公開、阪本順治監督)》

──「亡国のイージス」では主役の海上自衛官・仙石恒史役で出演されますね。役選びは慎重という真田さんが仙石役を引き受けた決め手は?

真田 仙石という人物は優秀な自衛官なんですが、思想的にはまったく中立というか、登場するテロリストの論理や政府や自衛隊が抱えている問題についても今の普通の日本人の考え方を持っている。そういう普通のヤツの働きが国の存亡にかかわる危機を阻止できちゃう、というのは普通の人に大きな勇気を与えるだろう、と。それから、イージス艦という最新鋭艦を支えながら、彼の行動は非常にアナログで、そういう男が最新鋭のハイテク環境の中で大きなことを成し遂げる。今までにないヒーロー像ですね。

《イージスとは、ギリシャ神話に登場するあらゆる邪悪をはらう無敵の盾の名。イージス艦は「艦隊の盾」として、遠距離から同時・多数飛来する対艦ミサイルから艦隊を防御する最先端技術・イージス・システムを搭載、日本の専守防衛の象徴だ》

──最新鋭艦を「盾」とするのも、破壊に利用するのも、すべては人間。物語は人間ドラマに焦点をあてていますね。

真田 どんどんハイテクが進む今、最後に彼を救ったのは、国民を救ったのは何か、本当に大事なのは何か、問いかけられているというか。技術や思想が移り変わっても変わらない何かが結局人間にとってすごく大事なんだな。そういうものを体現するというか、駆け抜けてみたいな、と。僕自身、理想を託してます。

──日本の防衛システムの現状など、かなり重いテーマが含まれていて、議論を引き起こす可能性もありますが、それについては?

真田 役を引き受けたころよりタイムリーなテーマになってしまいました。作品自体に意見を押し付ける偏りはあってはならないと思いますし、中立の役を僕がやらせていただくわけで、そのへんを守った上で、起こる論争は大事なこと。日本は世界で唯一の被爆国で(自衛隊による)まれな防衛体制の国。だからこそ、いろんな意見がある。一度はこういう議論に向き合う時期にきているという気はする。今の日本を描くうえで絶好のテーマかもしれないし。それを狙ってというか、そういう時代になっちゃって。

──国際的なテーマでもあります。日本映画は韓国、中国の勢いに押され気味ですが、海外市場で通用する作品になりそうですね。

真田 韓国や中国の映画は確かに勢いとか熱さとか感じます。日本ほど、なんとなく、というのが許されない状況が熱くしているのかな。日本は妙な冷静さがあって夢中になったり一生懸命になることに照れすぎなんですよ。観客は現実とは違う何時間かにお金を払ったりするわけですから、日本映画もちゃんとそういうもの(熱さ)を与えていかないと。

──戦う熱い男役が似合うと思っていましたが、真田さん自身やっぱり熱い人なんですね。サムライ・スピリットを感じます。

真田 道場に通って学んだことなどは精神的な支えにはなっていますね。忍耐であるとか、肉を切らして骨を断つとか。自分の持ち駒だけで勝負できないぎりぎりのところでがんばっているうち、初めて自分が開拓できる気がするんです。真っ先に飛び込んで闘って、切り開いて。そうやっていくことが、見ている人にも新鮮に感じていただけるし。日本がベースであることは変わりありませんが“出げいこ”は続けていきたいですね。

(福島香織)

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