天ぷらや炊き込みご飯が付いた「定番の冷汁うどん+セット」(1050円)

ゴマとみそを冷水で溶き砂糖を少し加えた汁に冷たいうどんをつけて食べる「冷汁うどん」。加須など埼玉県北東部で農作業の合間に食べるものだった。店主の岡戸知幸さん(56)の祖父、正作さんがメニューに取り入れ、加須の冷汁うどんの元祖として人気になった。

農作業の間に食べるものだから、だしを取っているひまはない。だしを入れないことで、つけ汁がさっぱりとした味わいになる。シソの隠し味も相まってうどんをすすると、爽快感が口いっぱいに広がる。

祖父が創立した亀屋の2号店から「子亀」とつけられたが今は子亀に統一され本店に

昔は「亀屋」という酒屋だった。角打ちの客にうどんを出していたが、「お客さんの中に『米が取れたらお金を払いに来るよ』といった人がいたそうです。貸し倒れになるなら、うどん屋に切り替えちゃおうと祖父が昭和22年に創業しました」と振り返る知幸さん。

最初は汁うどんを出していたが、あるときに夏の食べ物として冷汁うどんを始めた。「当時は近所の人から『そんなの売れねえよ』とさんざん言われたそうです」と知幸さん。上皇さまが皇太子時代に加須市を訪問した昭和52年、食事の場所に出前をして召し上がられたという。

車社会になって駐車場が必要となり、亀屋の2号店として駅から離れた現在の地に「子亀」と名付けて創業した。その後、祖父は本店をたたみ子亀に来て、こちらが本店となった。知幸さんは平成2年から店を任せられ、現在は店主。

手打ちしたうどんを伸ばしていく岡戸知幸さん

知幸さんがうどんをこねる際に気を使うのは、そのときの気温と湿度だ。

「手打ちじゃなくて機械だと、どんな天気でも一律なので粉がうまくまとまらないときもある。自分はコシが出るように加水率を状況をみながら微妙に変えていく」手打ちで切ったうどんを手で広げ延ばしていく。ここが腕の見せ所。

「自分が作業したうどんは約2メートルある。長いほどのど越しがよいですよ」

なるほど、ツルツルと口に入っていく喉越しの秘密は長さだったのか。

お昼時。天ぷらと炊き込みごはんを付けたセットメニューが人気だ。自分は、「肉みそうどん」(700円)が好きになった。加須で「埼玉B級グルメ」というイベントを開催したとき公募してできたメニュー。ラーメン界で「まぜそば」が人気だが、うどんのこれは、ラーメンにもそれに勝るとも劣らない。温玉とうどんが混じる複雑な味わいがたまらない。(昌林龍一)

手打ちうどん・そば「子亀」

住所:埼玉県加須市諏訪1の15の6

電話:0480・62・2876

観光メモ 加須市の多門寺、北篠崎両地区にまたがる「浮野の里」では、4月中旬ごろまで黄色いじゅうたんを敷き詰めたようなノウルシの群生が見られる。玉敷公園には推定樹齢450年の大藤があり長いもので1メートル以上の花房を垂れる。ゴールデンウイーク中には「騎西藤まつり」を開催。利根川河川敷緑地公園で開かれる「加須市民平和祭」では、全長100メートルで目と口の大きさが直径10メートルあるジャンボこいのぼりの遊泳が行われ、その姿は圧巻だ。

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