追加募集し採用試験を行った自治体一覧
注目
合格者の7割以上が辞退 高知県
追加の採用試験を受けた人は
高知県教育委員会 “何らかの手立てを打っていく必要がある”
受験者数は年々減少 対策が喫緊の課題
なぜ、受験者が減っているのか
専門家 “若い先生が働きやすい環境作り必要”
ことし6月に行われた小学校教員の採用試験で合格者の7割以上が辞退した高知県では、15日、追加の採用試験が行われました。高知県では、ことし6月に130人程度を採用する計画で小学校教員の採用試験を行い、547人が受験しました。高知県教育委員会では、あらかじめ一定の辞退者を見越して平成以降で最も多い、293人を合格としましたが、辞退者が相次ぎ、これまでに7割以上の209人が辞退したということです。そのため2次募集を行い、15日、高知市の高知工業高校で追加の採用試験が行われました。40人程度を採用する計画に対して74人の応募があり、筆記試験と面接試験が実施されました。県教育委員会によりますと、ことし6月の採用試験では県内のほか大阪府でも実施していて、ほかの自治体と併願する人も多く、県外から受験した人は地元を選ぶ傾向があるということです。
高知県内の40歳の男性は、「6月の試験は体調を崩して受けられませんでした。夏冬と2回あることで受験者にとっての幅も広がっていいです」と話していました。
大学4年の男子学生は、「地元の兵庫県に帰って働くことを考えていましたが、正規の教員として勤務できる可能性があるということで高知県の試験を受けました」と話していました。
高知県教育委員会教職員・福利課の田所良夫 課長補佐は、「大量退職の中で採用予定数も多くなる一方、受験者の数は減少傾向であり何らかの手立てを打っていく必要がある。2回目の試験ですべての教員を確保できればいいが、来年度も同じようなことにならないよう取り組みを考えていきたい」と話していました。
かつては『狭き門』だった教員の採用試験。いまや受験者の数は年々、減少していて、対策が喫緊の課題となっています。文部科学省によりますと、2023年度採用された公立の小中学校や高校などの教員の採用試験の受験者はおよそ12万1000人で、10年前(2013年)と比べて3分の2にまで減りました。全体の採用倍率は3.4倍で、2000年度には過去最高の13.3倍でしたが、その後、低下傾向が続いていて、2年連続で過去最低となりました。中でも小学校は2.3倍に落ち込み、5年連続で過去最低を更新しています。
名古屋大学大学院の研究チームが去年行った調査では、2週間以上の教育実習を経験した347人の学生のうち、「教員になりたくないと思うようになった」という回答は42%にも上りました。ただ、このうちの7割が「やりがいを感じた」とも回答していて、教員の仕事に魅力を感じつつも、長時間労働や保護者対応の負担などからためらう学生の姿が浮き彫りになっています。国や各地の教育委員会では、教員のなり手を確保しようと、採用の機会を増やす取り組みを進めていますが、複数の自治体の試験を併願する人が増えたことで合格者の半数以上が辞退した自治体も出ています。団塊の世代の教員の大量退職に伴って採用者数が増える一方で、受験者自体の数は減っていて、自治体間での“奪い合い”ともいえる状況の中、抜本的な解決にはなっていないのが現状です。
教員の養成制度などに詳しい東京学芸大学の岩田康之教授は、教員の採用機会を増やす動きについて、「教職に就くことを決めている学生にとってはチャンスが広がることになり、悪いことではない」と評価する一方で、大学3年生で採用試験の一部を受けられるようにするなどの取り組みについては、大学が必要な教職の科目を早めに学べるようにしておく必要があり、カリキュラムへの影響などデメリットもあると指摘します。その上で、「志願者が増加につながった自治体もあれば、減ったところもあるので自治体どうしで奪い合いをやっている状態になっていると思う」と話しています。岩田教授は、「一番の問題は、採用試験を受けようと思う人が全体として足りていないことだ」として、教員の処遇改善や働き方改革で若い先生が働きやすい環境作りを進める必要があると指摘し、「教職課程をとりながらも100%教員になろうとは思ってない学生を取り込むことが重要だ。これからの子どもたちの学びを作っていく仕事に参画しませんか、など、教員の魅力をアピールして、今までとは違う層の若者、あるいは社会人を取り込んでいくことを本気で考えるべき時期にきていると思う」と話しています。
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