厚生労働省が入る中央合同庁舎第5号館=東京・霞が関で、竹内紀臣撮影

 厚生労働省は19日、錠剤や注射剤などの区分ごとに薬価の下限値を定めた「最低薬価」を引き上げる方向で調整に入った。物価高騰に配慮した措置で、消費増税時の対応を除き、2000年度以降での引き上げは初めて。

 最低薬価は最低限の供給コストを確保するため、成分ではなく、錠剤や注射剤などの区分ごとに設定されている。例えば、錠剤は1錠につき10・1円、カプセル剤も1カプセルで10・1円、顆粒(かりゅう)剤は1グラムで7・5円、注射剤では100ミリリットル未満なら97円といった具合だ。物価高騰の影響で安定的な供給に支障が出るとして、製薬業界から最低薬価の引き上げを求める声が上がっていた。具体的な引き上げ幅は今後、調整する方向だ。

 来年度に実施される医薬品の公定価格である薬価の改定に合わせて対応する。医薬品市場での取引価格が薬価より平均で5・2%下回ったため、従来通り引き下げる方針だ。厚労省と財務省などの間で近く合意する見通し。

 薬価はかつて原則2年ごとに引き下げていたが、21年度から毎年度改定されるようになった。製薬業界は研究開発や安定供給が阻害される恐れがあるとして、毎年度の改定に反対している。【阿部絢美】

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