ほんのりクリーム色のみそあんが詰まったかしわ餅(左手前)にはなじみがない地域も多い=日本あんこ協会提供
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 こどもの日に欠かせない「かしわ餅」のあんといえば? あんこ愛好者らで構成する「日本あんこ協会」が実施した「かしわ餅」に関する初の全国調査で、愛知、岐阜以西の地域では「小豆あんしか見たことがない」との回答が50%以上を占めた。「みそあんを兄貴に食べられて悔しい……」という子どものころの体験は、地域限定のものだったようだ。

 調査は4月19~26日、協会員を対象に実施。550人から回答があった。「小豆あんしか見たことがない」「小豆あんとみそあんの両方を見かける」「みそあんしか見たことがない」の3択から選んでもらった。

 「両方を見かける」との回答が50%以上だったのは、東日本を中心に20都道府県。

みそあんが入ったかしわ餅の普及状況は東西で大きく異なる=日本あんこ協会提供
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 これに対し、「小豆あんしか見たことがない」が過半数を占めたのは主に西日本で27府県に上り、東西で「みそあん」の普及状況が違うことが鮮明になった。「みそあんしか見たことがない」との回答はゼロだった。

 例外もみられる。東日本でも福島、新潟では「小豆あんのみ」が多く、西日本でも京都、滋賀では「両方見かける」が半数以上となった。これについて、協会のにしいあんこ会長は「和菓子の世界では、修業先で覚えた菓子を地元に持ち帰るケースも多い。その都度、新しい和菓子文化が地域に浸透していったということではないか」と推測している。

 両方販売されている地域では、小豆あんは鮮やかな緑色の葉で包み、みそあんは茶色がかった葉を使うなど、包むカシワの葉の色で両者を区別している和菓子店も少なくない。

みそあんの入ったかしわ餅(右)は優しいみその香りが魅力だ。左は小豆あん=日本あんこ協会提供
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 協会によると、2種類の葉の使用は、明治時代に太陽暦が採用されたことに由来する。カシワの葉は6月上旬(旧暦の5月)に餅を包むのに適切な大きさになる。明治以降は、端午の節句までに十分に葉が成長しないため、前年に採取して保存した茶色の葉を使うようになったという。

 にしい会長は「小豆あん」優勢の奈良県出身。みそあんを初めて食べたのは中高生のころだった。あまじょっぱい味にびっくりすると同時に、あんこの可能性を感じたという。「和菓子は五感で味わうものなので、小豆あんも、みそあんも楽しんでほしい」と話している。【安藤龍朗】

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