命の大切さについて講演する宮崎さん

 2005年にいじめを苦に中学3年で自ら命を絶った安部直美さん(当時15歳)の命日(13日)を前に、下関市の小中高校などで12日、性的少数者やプロマジシャンらによる「命の大切さ」を学ぶ講演などがあった。市では12年に4月13日を「下関市いのちの日」とし、毎年同日を中心に市内各地で命の大切さを考える授業や講演会などを開いている。【橋本勝利、柳瀬成一郎】

 同市彦島本村町の市立玄洋中(和田宗久校長)では、性的少数者(LGBTなど)に関する情報発信や当事者同士の交流を目指す市民団体「I′m me(アイム ミー)」(北九州市)の代表理事、宮崎猛志さん(64)の講演会が開かれた。

 宮崎さんはエステティシャンや歌手としても活動。50代で心の性が女性だと気付いたトランスジェンダーだ。金髪、スカート姿で登場し、体の性と心の性が一致しない人の存在など自らの経験を基に語りはじめた。

 「男らしく、女らしくでなく、自分らしくあってほしい。ありのままの姿を認めてあげれば悲しいことは起こらない」。さらに「身近な友人や仲間から相談を受けたら、話を聞ける人、そして『話をしてくれてありがとう』と言える人になってほしい。それが共感につながる」と語り掛けると、全校生徒約110人は真剣な表情で聴き入っていた。宮崎さんは取材に「悲しいことが起きないように、気づきとなってくれるとうれしい」と話していた。

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高重さんの鮮やかなマジックを見た児童は笑顔に

 同市菊川町の市立岡枝小では、不登校を経験したプロマジシャン、高重翔さん(31)=山口市=が講演。少年時代は集団生活が苦手で学校に足が向かなかったといい、学校では教室で一人で昼食を食べていたことも。児童に「僕みたいな子には『一緒に食べよう』と声を掛けて」と話し、「たとえつまずいても、だれかを頼ってほしい。そして違う道を探って」と呼び掛けた。

 高重さんにとっての「違う道」は中学時代にテレビでみたマジック。のめり込んで練習を重ね、人前で堂々と話せるようにもなった。講演中も、ひもやトランプを使った鮮やかなマジックを披露し、児童を笑顔にした。高重さんは全校児童127人に「生きているだけで価値があるんだよ」と伝えた。6年の内田昇児さん(11)は「いのちの大切さをしっかりと学びました」と話していた。

相談窓口

・24時間子供SOSダイヤル

 いじめやその他の悩みについて、子どもや保護者などからの相談を受け付けています。原則として電話をかけた所在地の教育委員会の相談機関につながります。

 0120・0・78310=年中無休、24時間。

・子どもの人権110番

 「いじめに遭っている」「家の人に嫌なことをされる」など、先生や親には話しにくい相談に法務局の職員や人権擁護委員が応じます。

 0120・007・110=平日の午前8時半~午後5時15分

・まもろうよ こころ(https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/sns/)

 さまざまな悩みについて、LINEやチャットで相談を受けている団体を紹介する厚生労働省のサイトです。年齢や性別を問わず、自分に合った団体を探せます。

・こころの悩みSOS(https://mainichi.jp/shakai/sos/)

 悩みを抱えた当事者や支援者への情報のほか、相談機関を紹介した毎日新聞の特設ページです。

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