◇◇取材こぼれ話◇◇
《基礎情報》大橋悠依 選手
決勝のレースで『派遣標準記録』と呼ばれる日本水泳連盟が設定したタイムを突破したうえで、2位以内に入れば個人種目の代表に内定する“一発勝負”の舞台でした。
大橋選手は、最終日に行われた本命種目の200メートル個人メドレー決勝に「このレースで負ければ引退」と強い決意で臨みました。
17歳の成田実生選手や22歳の松本信歩選手といった若手が急成長するなかで三つどもえの展開。それでも大橋選手は持ち味の伸びのある泳ぎで、2人を振り切り接戦の末、優勝。設定されたタイムも突破して、あとのない瀬戸際の状況から会心の泳ぎで内定をつかみました。
大橋悠依 選手「こういう舞台で泳げることはすごく幸せだと思った。自分の競技人生の終わりが近づいていて、今回のレースもどうなるか分からないなか自分の100%の力を出すことだけを考えた。すごくいいレースができた」
大橋選手が200メートルと400メートルの個人メドレーで2つの金メダルを獲得し、大きな注目を集めた3年前の東京オリンピック。
大橋選手は自国開催でのオリンピックを節目として、現役を引退することも考えていたといいます。しかし、金メダル2つという最高の結果を出したものの、当時はコロナ禍で無観客。この状況を前にして、思い描いていた感情とは違った思いが湧いてきました。
「自分が目指していた成績を得ることができて、テレビでも多くの人が見てくれたが、実感があまりない不思議な感覚で、それは今も続いている。自分でも本当にメダルを取ったのかなという感じだった」
“多くの人に自分の泳ぎを見てほしい”その思いが大橋選手がパリオリンピックを目指す大きな原動力になっています。
「観客がいて、すごく盛り上がっているオリンピックを味わってみたい気持ちがある。これまで支えてくれた人、見に来てくれた人に、いい泳ぎを見せたいという思いがいちばん強い。自分のチャレンジする姿を見てもらえたらうれしい」
そのパリの舞台を目指して、大橋選手はみずからに厳しい泳ぎ込みを課してきました。
パリ大会に向けては、200メートル個人メドレーを本命と考えてきましたが、あえて400メートルのレースにも挑戦。長い距離にも耐えられるように、多い時には週に60キロ以上泳ぎ込んで、体力の底上げを図ってきました。
「200メートルのために、400メートルを泳ぎ切れる体力や筋力をつけ直してきた。きついけど、ちゃんと距離を積んでおかないと、大会前にスピードも上がってこないので、辛抱だと思ってやっていた」
そうして体のベースをつくった先に追い求めたのが“きれいなフォーム”でした。腕のかきやキックの動作を一つ一つ分けて泳いで抵抗の少ない伸びのあるフォームをつくり、持ち味の美しい泳ぎに磨きをかけていきました。
「ストロークなどいいものを積み重ねた先にいいタイムがあると思う。とにかくいい泳ぎで、それを長く続ける。それが一番速く泳げるシンプルなことだと思う。パリの決勝でいちばんいい泳ぎをすることをイメージしてやっていきたい」
大橋選手は代表選考の大会のあと、パリオリンピックでの目標について「決勝で自己ベストのタイムを出すこと」を掲げました。
とにかく自分の持てるすべての力を出し尽くす。その覚悟で“集大成”の舞台に臨みます。
「東京大会の金メダリストとして行くことになるが、チャレンジしていくことが自分には必要だと思う。とにかくチャレンジャーの気持ちを忘れずに、ほかの選手に挑んでいきたい。自分の集大成になると思うので何一つやり残すことがないように、全部を出す、全部を使っていいレースをしたい」
大橋選手が今、はまっているという趣味が写真撮影です。
去年、購入したカメラを遠征先にも持参。現地の風景などを撮影しているということです。
2月の取材の際も、インタビュー前や昼食中だけでなく、練習の合間にも「テレビ撮影しているこの様子を撮りたい」とプールの中から写真を撮るほどの熱中ぶりでした。(2024年3月24日「サンデースポーツ」などで放送)
▽生年月日:1995年10月18日▽出身:滋賀県▽主な実績:・2021年 東京五輪 女子200m個人メドレー 金メダル・2021年 東京五輪 女子400m個人メドレー 金メダル・200m、400m個人メドレーの日本記録保持者
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