この春、大阪の高校野球界に新風が吹いた。

 大阪学院大が初めて春の府大会で頂点に立った。甲子園出場は1996年春の1回だけだが、今春は4回戦で履正社、準々決勝で大阪桐蔭を下した。同じ大会で「大阪2強」と評される両校に勝ったのは、2009年夏のPL学園以来だった。

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 「履正社さんも大阪桐蔭さんも強い。ただ、うちが勝つと思っていました。その力はついた」。そう話す辻盛英一監督(48)は、異例の経歴の持ち主だ。

 奈良高から大阪市立大(現大阪公立大)を経て、銀行に就職。20代後半に転職した大手保険会社では営業成績が13年間トップ。仕事と並行して10年から大市大の監督を13年間務めた。現在は生命保険代理店を経営しながら、昨春から大阪学院大の監督になった。

 就任にあたり、「高校野球はこうあるべき」は覆した。髪形は自由で、週末でも練習は最長4時間。プレゼンテーションソフトを使って保護者に指導法を説明する。

 「何でも絶対にやらせてみる。できなくても、ほめる。すると、選手から質問が出てくる。社員の育て方も同じです」。攻撃中はノーサイン。選手が自分たちで決断したプレーが最も成長につながると考える。

 監督を含めてコーチ陣は8人。守備、打撃、投手、動作分析など役割を分担する。22年秋に専用グラウンドが完成し、トレーニング場にはトレーナーが常駐する。充実した環境の中、「目指すのは日本一」と山口県出身の主将・今坂幸暉(ともき)(3年)は言う。

 過去10年、春夏秋の大阪の公式戦を制した数が最も多いのは大阪桐蔭で計18回。履正社が計5回で続く。2回以上優勝したのはこの2校だけだ。

 辻盛監督は「大阪2強は終わります。うちが終わらせます」ときっぱり。この夏、その言葉は現実となるのか、それとも「2強」が意地を見せるのか。夏の地方大会で全国屈指の激戦区と言われる大阪の、注目ポイントになりそうだ。(室田賢)

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